漢詩と中国文化
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秦州雜詩二十首其十九:杜甫を読む



杜甫の五言律詩「秦州雜詩二十首」其十九(壺齋散人注)

  鳳林戈未息  鳳林 戈未だ息まず
  魚海路常難  魚海 路常に難し
  候火雲峰峻  候火雲峰峻しく
  懸軍幕井幹  懸軍幕井幹(かは)く
  風連西極動  風は西極に連って動き
  月過北庭寒  月は北庭を過ぎて寒し
  故老思飛將  故老飛將を思ふ
  何時議築壇  何れの時か築壇を議せん

鳳林関の方では戦火がいまだ収まらず、魚海に到る道は困難を極める、険しい雲に向かって烽火があがり、官軍の宿営地では井戸の水が乾く

風は西極に連って動き、月は北庭を過ぎて寒い、老人たちはみな優れた将軍の登場を願っている、いつになったらそのような日が訪れるだろうか


戦火と飢饉を逃れて流れてきた秦州も安らぎの地ではなかった。杜甫は初めここに骨を埋めてもよい覚悟だったが、結局は2ヶ月ほど逗留しただけで去ることになる。

東のほうでは史思明の乱が戦乱をますます拡大させ、西の辺境ではチベット族が反乱を起こして攻め寄せてくる。この詩はそうした戦火の急迫を歌ったものだ。

飛將とは漢の武将李広のこと。辺境を守って砂漠に戦うこと40年、漢を匈奴の脅威から守った。中国人にとっては祖国防衛の英雄であり、中国が外敵の攻撃にさらされるごとに、必ず民衆からその再来を希求された






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