漢詩と中国文化
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初月:杜甫を読む



杜甫の七言律詩「初月」(壺齋散人注)

  光細弦欲上  光細くして弦上らんと欲す
  影斜輪未安  影斜にして輪未だ安からず
  微升古塞外  微に升る古塞の外
  已隱暮雲端  已に隱る暮雲の端
  河漢不改色  河漢色を改めず
  關山空自寒  關山空しく自ら寒し
  庭前有白露  庭前白露有り
  暗滿菊花團  暗に菊花に滿ちて團なり

初月の光が細く、ようやく弦が上ろうとしている、影は斜めになって環の形は定まらない、古塞の外にかすかに上ったかと思うと、暮雲の端に隠れてしまった

天の川は色を変えずに輝き、関所の山は寒々としている、庭前に白露が落ちては、菊の花に丸くまとわりついた


秦州にあっての詠懐詩のひとつ、初月すなわち新月の細い弦の光を歌ったもの。新月の光は弱々しく、闇を照らし出すほどの明るさはない。それでも菊の花にまとわりついた白露をかすかに浮かび上がらせている。

詩の風情が杜甫の衰弱した精神と呼応するかのようだ。






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