漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS

促織:杜甫を読む



杜甫の七言律詩「促織」(壺齋散人注)

  促織甚微細  促織甚だ微細なり
  哀音何動人  哀音何ぞ人を動かす
  草根吟不穩  草根に吟ずること穩やかならず
  床下意相親  床下 意 相親しむ
  久客得無涙  久客涙無きを得んや
  故妻難及晨  故妻晨に及び難し
  悲絲與急管  悲絲と急管と
  感激異天真  感激天真に異なり

キリギリスは甚だ微細だが、その哀れな声はなんと人を感動させるものよ、草の根に啼くさまは穏やかならず、床の下に居る姿をみては気持ちの通じ合うのを感ずる

この声を聞いては旅人も涙なしではおられず、残された妻も一人で夜を明かすのがつらいだろう、ゆっくりと啼いてはまたあわただしく鳴き、これがキリギリスの天性とは思われぬほど感激させられる


促織はキリギリスのこと。その泣き声は洋の東西を問わず愛されてきた。微妙な旋律に乗って風の中に響き渡る声が、どこか哀愁を感じさせる。






前へHOME杜甫次へ




 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである