漢詩と中国文化
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南鄰:杜甫を読む



杜甫の七言律詩「南鄰」(壺齋散人注)

  錦裡先生烏角巾  錦裡先生烏の角巾
  園收芋栗未全貧  園に芋栗を收めて未だ全く貧ならず
  慣看賓客兒童喜  賓客を看るに慣れて兒童喜び
  得食階除鳥雀馴  階除に食するを得て鳥雀馴る
  秋水才深四五尺  秋水才(わづか)に深し四五尺
  野航恰受兩三人  野航恰(あたか)も受く兩三人
  白沙翠竹江村暮  白沙翠竹江村の暮
  相送柴門月色新  相ひ送れば柴門に月色新たなり

錦裡先生は黒い頭巾をかぶり、園に芋栗を拾い集めてなんとか暮らしている、賓客のやってくるのを見て子どもたちは喜び、鳥雀は人になれて庭で餌をつつく

秋の川の水はわずか四五尺の深さだが、そこに二三人の人を乗せた小船が浮かぶ、白沙と翠竹に囲まれて江村の一日が暮れ、柴門で別れればあたかも新月がかかっている


南鄰の住人を訪ねたことを歌ったものだろう。錦裡先生とはその主人の名。自分と同じように豊かな生活ではないが、かといってまったく食うに事欠くほどではない。家の中にはやはり自分と同じように子供たちがいて、客の姿を見ると喜んで迎えてくれる。

そんな気持ちの許せるような隣人をもつことは、杜甫にとって幸いなことだったに違いない。北隣の友人を訪ねた詩も作っている。






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