漢詩と中国文化 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|陶淵明|英文学|仏文学|西洋哲学 | 万葉集|プロフィール|BSS |
恨別:杜甫を読む |
杜甫の七言律詩「別れを恨む」(壺齋散人訳) 洛城一別四千裡 洛城一別 四千裡 胡騎長驅五六年 胡騎長驅す五六年 草木變衰行劍外 草木變衰して劍外に行き 兵戈阻絶老江邊 兵戈阻絶して江邊に老ゆ 思家歩月清宵立 家を思ひ月に歩して清宵に立ち 憶弟看雲白日眠 弟を憶ひ雲を看て白日に眠る 聞道河陽近乘勝 聞く道(な)らく河陽近ごろ勝に乘ずと 司徒急為破幽燕 司徒急に為に幽燕を破れ 洛陽に別れを告げてさまようこと四千里、胡騎が長く馳せて五六年が過ぎた、草木が落葉するころに剣門を超えて蜀にきたが、兵戈は相変わらず納まらず、川のほとりのあばら家で老いていく 故郷を思っては月光の下を歩みたたずみ、弟の消息を心配しては雲を見ながら白昼夢に耽る、聞くところによれば官軍が河陽の戦いに勝ったそうだ、願わくはこのまま逆賊を平らげて欲しい 別れとは弟たち肉親との別れをさすのだろう。洛陽が賊の手に落ちて以来自分は放浪の身となって、肉親とはばらばらになってしまった。ただ妻子とともにあることだけが、せめてもの慰めだ。 望郷の念とともに、肉親に会いたいという気持ちも強まるばかりだ。お互い生きているうちに再会したい。聞けば官軍が河陽の戦いに勝ったそうだ。できればこの勢いのままに、洛陽をも平定してもらいたい、そうすれば肉親と会うこともできるだろうからと、杜甫はそんな望みを歌に託すのだ。 |
前へ|HOME|杜甫|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |