漢詩と中国文化 |
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野望:杜甫を読む |
杜甫の七言律詩「野望」(壺齋散人注) 西山白雪三城戍 西山の白雪三城の戍り 南浦清江萬裡橋 南浦清江の萬裡橋 海内風塵諸弟隔 海内の風塵に諸弟隔たり 天涯涕涙一身遙 天涯涕涙一身遙かなり 惟將遲暮供多病 惟だ遲暮を將て多病に供し 未有涓埃答聖朝 未だ涓埃の聖朝に答ふる有らず 跨馬出郊時極目 馬に跨がり郊を出で時に目を極めれば 不堪人事日蕭條 堪へず人事の日々に蕭條たるに 雪をいただいた山を西に望みながら三城が守りを固めている、ここは成都のうち南浦清江の萬裡橋のあたり、天下の風塵に弟たちと離れ離れになり、天蓋孤独の身に涙するばかり 春の温暖な天気に骨を休めるこの身には、天子の恩寵にこたえるすべもない、馬にまたがって郊外に出、視線を極めれば、厳しそうな民情に心が痛むのを感じる 野望とは野原の眺めのことをいう。その眺めの中にふと、自分自身のまぼろしがちらちらと見え隠れする。その自分とは何者なのか。老いたる杜甫は自問せずにはいられない。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |