漢詩と中国文化
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登樓:杜甫を読む



杜甫の五言律詩「樓に登る」(壺齋散人注)

  花近高樓傷客心  花は高樓に近く客心を傷ましむ
  萬方多難此登臨  萬方多難此に登臨す
  錦江春色來天地  錦江の春色天地より來り
  玉壘浮雲變古今  玉壘浮雲古今變ず
  北極朝廷終不改  北極の朝廷終に改まらず
  西山寇盜莫相侵  西山の寇盜相ひ侵すこと莫かれ
  可憐後主還祠廟  憐む可し後主還祠廟
  日暮聊為梁甫吟  日暮聊か為す梁甫の吟

高樓の近くに咲いた花が旅人の心を悲しませる、一帯苦難に満ちた中独り高楼に登る。錦江には天地から湧き上がった春の気配が満ち、玉壘山の浮雲は今も昔も変わりがない

北極の朝廷は胡の侵略を持ちこたえている、西山の強盗どもにも侵略はさせない、蜀の後主とその祠廟を思うと感慨深く、日が暮れる頃梁甫の吟をうなるのだ


広徳2年(764)成都にあっての作。錦江、玉壘ともに成都の風物である。

戦乱に明け暮れる世の中を嘆き、諸葛孔明のような偉人の到来を願って詩を結んでいる。






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