漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS


念奴嬌:蘇軾を読む



赤壁譜二編を書いたと同じころ、蘇軾は念奴嬌という詞を書いている。赤壁の戦いの立役者周瑜を歌ったものだ。

  大江東去    大江東に去り
  浪淘盡     浪は淘盡す
  千古風流人物  千古風流の人物を
  故壘西邊    故壘の西邊
  人道是     人は道ふ是れ
  三國周カ赤壁  三國周カの赤壁なりと
  亂石穿空    亂石は空を穿ち
  驚濤裂岸    驚濤は岸を裂き
  卷起千堆雪   卷き起こす千堆の雪
  江山如畫    江山畫くが如く
  一時多少豪傑  一時多少の豪傑ぞ

長江は東へ向かって流れ、波が千古風流の人物を洗い流してきた、古い砦の西の辺にあるのは、あの三国志の周カの赤壁だと人々はいう

ごつごつした岩は空を突き刺し、怒涛は岸辺を裂き、おびただしい雪のような波が巻き起こる、まさに江山は絵のように美しい、一時にどれほどの豪傑がでたことか

  遙想公瑾當年  遙かに想ふ公瑾の當年
  小喬初嫁了   小喬初めて嫁し了り
  雄姿英發    雄姿英發なりしを
  註綸巾    註綸巾
  談笑間     談笑の間
  檣櫓灰飛煙滅  檣櫓は灰と飛び煙と滅びぬ
  故國~遊    故國に~は遊ぶ
  多情應笑我   多情應に我を笑ふべし
  早生華髪    早に華髪を生ぜしを
  人間如夢    人間は夢の如し
  一樽還将江月  一樽還た江月に将(そそ)がん

はるかに公瑾(周カ)の生きた三国時代に思いを馳す、小喬が周カに嫁いでまもなくの頃、雄姿は凛凛として、居住まいは註綸巾(ゆったり)、その周カが談笑の間の短い時間で、敵艦隊を灰と煙にした、

故国に思いを馳せれば、つい感傷的になって、白髪頭を笑われるかもしれぬ、人生とは一瞬の夢のごときもの、樽を抱えて酒を飲むに越したことはない






前へ|HOME蘇軾次へ






 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである