パリ紀行
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シテ島散策:パリ紀行その四


オペラ座前よりバスに乗り、シテ島付近にて下車す。コンシェルジュリーに通ずる橋を渡るに、そこはシテ島中心部を走るパレ大通りにて、右手には司法省とサント・シャペル、左手にはパリ警視庁の建物並び立ちたり。

サント・シャペルはパリ市内最古の教会建築なる由にて、建物そのものは司法省と一体なり。内部には荘厳なる祈りの空間あり。キリスト教徒ならぬ我が身にも、その宗教的厳粛さは伝はり来るなり。



ノートルダム寺院は、凱旋門と並んでパリの象徴ともいふべき建築物なり。これもまた荘厳な祈りの空間を抱き抱へたり、外面の壮大さは人の意表をついて、限りなく厳格なり。

さればこそ、シテ島はパリ発祥の地として、今だにパリの心臓ともいふべき位置づけを有せること、あらためて感ずるなり。



ここにていささか疲労を覚えたれば、いったんホテルに戻りて休息をとらんと、サンミシェル駅よりRERに乗り、夕刻クール・サン・テミリオンに至る。

駅前のモノプリ(スーパー)にて買物をなし、とあるテラスの席に腰掛けてビールを飲む、ぞのうち横子どうしたわけか買物袋を地上に落としてワインボトルを破損し、その際飛び散りたるワインが隣席なる老人の背広にかかりたり。横子大いに狼狽してなすすべもなく佇立するばかりなり、しかして余に助けを求めし故、余は「日本語でもよいから早く謝れ」と叱咤せり。

横子老人の肩を抱いて、すみません、すみませんと連呼し、許しを請ふが如き様子に見えたれば、老人もそれ以上追及せず、さりとて怒りが収まる様子もなくて、しばらくの間仏頂面をしてをりしが、やがてあきらめてその場を立ち去りたり。余らもその後から席を離る。



ホテルに戻るや、旅行会社の現地案内人に電話を入れ、LIDOの観劇券の手配を依頼す。また、いづこかシャンソンを聞かせるところはなきやと尋ねしが、案内人もホテルのレセプションも心当たりなしといふ。

部屋に一憩して後、黄昏時再び外出し、付近のイタリア料理店に入りて夕餉をなす。スパゲッティに白ワインの組み合はせなり。スパゲッティはうまからず、ワインも酸味が強すぎて口にあはざりき。

晩間、我が持ち来れるバーボンウィスキーを嘗めつつ語り、深更に及ぶ。





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