団子坂下(35×28cm ヴェランアルシュ 2004年11月)

スケッチブックを携えて東京の街を描いていていつも感じることは、街並全体として絵になる風景が非常に少ないということだ。わたくしは欧米の都市にはあまり馴染みがないのだが、それでも油絵や写真で見る整然として美しい街並は画家の創造意欲をかきたてるに足るものだと思う。それに反して東京の街は、形態の面でも色彩の面でも余りに雑然として、人の美意識に訴えるものを欠いていると思うのだ。

東京の街を歩いていて絵心をそそられる対象に出会うと、それは大抵単体としての建物であったり、風景の局所的な部分における風変わりな眺めであったりする。街並が全体として醸し出す美しさというよりは、細部から滲み出す途切れ途切れの印象であり、それが偶然画家の目を捉えるという訳だ。かように東京にあっては、美は細部に宿るのである。

絵は千駄木の団子坂を下ってきて不忍通りとの交差点の一角に見つけた喫茶店の建物である。赤レンガの錆びた色に絵になるものを感じた。周囲は視界に入らない。壁面だけを描く外表現の仕様がなかったのである。






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