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  冬枯の弘法寺(23×30cm アルシュ 2003年1月)

弘法寺の山門の手前を右に進むと、荒涼とした墓地の広がる一画に出る。寺の立っている丘の外れで、すぐ傍は崖である。ここに来ると、この寺が小高い丘の端に立っていることがよくわかる。墨東地域はいく筋もの川の流れが交差して広大なデルタを形成しているが、江戸川を渡って市川に入ると台地が見られるようになる。北総地方は海岸段丘の特徴著しい所で、丘と低地が砂丘の砂紋のように連なる地形で知られているが、市川あたりは、その地形の西側の境界を画しているのである。

この日わたくしは市川にある画塾に通った帰り、冬枯れを描いてみようと思って弘法寺を訪ねてみた。弘法寺は、春の桜、秋の紅葉がそれぞれに美しいのであるが、冬枯れもまた捨てがたい趣を持っている。

折から天は陰り木は葉を落とし、墓に立てかけられた卒塔婆は鈍い色を呈している。遠景には谷を挟んで東側の丘が見渡される。絵の右に立っている古木が、何とはなく冬の空気の蕭條たるさまを象徴してみえる。この光景に烏が加わったら、何もいうことはあるまい。