日比谷の街角(26×36cm ヴェランアルシュ 2006年9月)
日比谷といえば、昔も今も劇場や映画館が集まるエンターテインメント空間だ。
丸の内のオフィス街と
銀座のショッピング街に挟まれたところにあるため、気晴らしを求める人たちが自然と集まりやすいのである。シャンテの前の広場にはゴジラの像が飾ってあったりして、いかにも遊興的な雰囲気があたり一面に漂っている。
この一角に、絵にあるような建物が建っている。
三信ビルといって、もともとはオフィス用のビルだったのだが、内部の空間は劇場のような華やかさに満ち、また喫茶店なども店を開いていたので、日比谷に遊びに来た人々が、このビルの中に入っても、街角の延長上にいるかのような気分を味わえた。
「味わえた」と過去形で書いているのには訳がある。実は、このビルは老朽を理由に建て替えられることとなり、わたくしがこのスケッチを描いた時点では、閉鎖されていたからである。
このビルは、建築物としても相応の価値があり、その保存を求める人も多いそうだ。所有主の三井不動産は、取り壊しの方針を崩していないようだが、何とか知恵をしぼって、この風格のある建物を後世に残してほしいものだ。