漢詩と中国文化
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杞人憂:秋瑾を読む


秋瑾の七言絶句「杞人の憂」(壺齋散人注)

  幽燕烽火幾時收  幽燕の烽火 幾時にか收まる
  聞道中洋戰未休  聞道(きくならく)中洋戰ひ未だ休まずと
  漆室空懷憂國恨  漆室の空懷 憂國の恨み
  難將巾幗易兜冒  巾幗を將(も)って兜冒に易(か)ふること難し

幽燕(河北省あたり)の戦火はいつになったらやむのでしょう、聞くところによれば中国と西洋諸国との戦いがいまだやまないとのこと、漆室の女性の思いも空しく、憂国の思いも悲しい、巾幗を兜冒にかえて戦うことはできないものかしら(幽燕:遼寧省と河北省、漆室:魯の村、巾幗:女性の髪飾り、兜冒:鎧兜)


1899年、河北省あたりで義和団の乱が始まり、それに西洋の列強が介入して戦火となった、この詩はそれを歌ったもの

題名の杞人憂は、杞憂の語源となった有名な故事にちなむ。故事では不必要な心配と言うことになっているが、ここでは当然心配になるという反対のニュアンスで使われている。

巾幗は中國女性の代表的な髪飾り。それを兜にかえて戦いたいと歌うこの一節は、以後秋瑾のシンボル・イメージとなった。孫文が秋瑾のために書いた碑にも、巾幗女士と表現されている。






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