漢詩と中国文化
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臨江仙:秋瑾を読む


秋瑾の詞から「臨江仙」(壺齋散人注)

  把酒論文歡正好  酒を把って文を論ぜば 歡正に好し
  同心況有同情    同心 況んや同情有るをや
  陽關一曲暗飛聲  陽關 一曲 暗に聲を飛ばせば
  離愁隨馬足     離愁 馬足に隨ひ
  別恨繞江城     別恨 江城を繞る

  鐵畫銀鈎兩行字  鐵畫 銀鈎 兩行の字
  岐言無限丁寧    岐言 無限に丁寧なり
  相逢異日可能憑  異日に相ひ逢ふ 憑ること能ふべしや
  河梁攜手處     河梁 手を攜へし處
  千里暮雲橫     千里 暮雲橫はる

酒を飲みつつ文を論じれば歓楽極まる、況や同じ心情同志の者がいるのだからなおさらのこと、別れの歌たる陽關を歌えば、離愁は馬車の歩みに従い、別れの恨みは江城をめぐる(陽關:送別の曲、王維の「送元二使安西」の「西出陽關無故人」に由来する)


優れた書体の二行の文字で書かれた、送別の言葉が限りなく訴えかけてくる、またの日に再開することが出来るだろうか、川の橋で手をつなぎ合ったところを思い起こすと、はるか彼方まで暮雲が横たわって見える(鐵畫も銀鈎も書体の一種、そこから転じて能書のことをいう、岐言:別れの言葉、丁寧:ぐっとせまってくるさま、河梁:川の橋)

1904年2月、秋瑾が日本に向かって旅立つに際し、親しい友人たちが北京城南の陶然亭で送別会を開いてくれた。これはその際に作ったもので、送別の情を詞に託した。詞とは楽曲のことで、曲をつけて歌う。臨江仙はその曲の形式の一つをあらわす。






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