漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS

秋晩閑歩隣曲以予近嘗臥病皆欣然迎労:陸游を読む


陸游の七言律詩「秋の晩閑歩すれば、隣曲、予の近ごろ嘗て病に臥せるを以て、皆欣然として迎へ労らふ」(壺齋散人注)

  放翁病起出門行  放翁 病より起きて 門を出で行けば
  績女窺籬牧豎迎  績女は籬に窺ひ 牧豎は迎ふ
  酒似粥醲知社到  酒は粥に似て醲(こ)く 社の到るを知り
  麭如盤大喜秋成  麭(もち)は盤の如く大にして 秋の成るを喜ぶ
  帰来早覚人情好  帰来 早に人情の好きを覚え
  対此弥将世事軽  此に対して弥(いよい)よ将って 世事を軽んず
  紅樹青山只如昨  紅樹 青山 只 昨の如きも
  長安拝免幾公卿  長安 幾公卿かを拝免する

わしが病床から起きて門を出ていくと、糸紡ぎの女は生垣からのぞき、牧童は出迎えてくれる、酒が粥のように濃いのは祭りが近いせいか、餅は大皿のように大きいのは豊作のしるしか(放翁:陸游の自称、牧豎:牧童、社:村祭り、盤:大皿)

帰ってきて以来、人情の厚いのに感激し、これに対して出世のことがますますどうでもよくなる、紅樹と青山は昔と変わらぬが、長安では何人の大臣が入れ替わったことか


淳熙4年(1193、69歳)故郷紹興での作。しばらく病に伏したあと、具合がよくなって外へ出たところ、隣近所の人が暖かく出迎えてくれた。その人情味を喜ぶとともに、役所勤めの馬鹿馬鹿しさを対比したものだ。






HOME陸游次へ




 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2013
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである