漢詩と中国文化
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讀陶詩:陸游を読む


陸游の五言律詩「陶詩を讀む」(壺齋散人注)

  我詩慕淵明  我が詩淵明を慕ふも
  恨不造其微  恨むらくは其の微に造らざること
  退歸亦已晩  退歸 亦た已に晩し
  飲酒或庶幾  飲酒 或ひは庶幾(ちか)からん
  雨餘鋤瓜壟  雨餘 瓜壟に鋤き
  月下坐釣磯  月下 釣磯に坐す
  千載無斯人  千載 斯の人無し
  吾將誰與歸  吾將に誰とともにか歸らん

我が詩は陶淵明を慕うところだが、残念なことにその微妙さには及ばない、引退するのも淵明に比べて遅かったが、酒を飲むことにかけてはひけをとらぬかもしれぬ

雨後は畑を耕し、月下に釣り糸を垂れる、この人がいなくなってからはや1000年、自分は誰と歩みをともにすればよいのか


淳熙4年(1193、69歳)の作。陸游は陶淵明を深く尊敬していた。詩作にあたって陶淵明の影響を受けたのはもとより、陶淵明を追慕した詩も作っている。

「退歸亦已晩」とは、陶淵明が41歳で引退したのに比べ、陸游自身は66歳まで仕官したことを自嘲して言っているのだろう。末尾の二句については、淵明の「貧士を詠ず其四」のなかにも、「從來將に千載たらんとするに 未だ復た斯の儔を見ず」という表現があり、やはり先人に己をなぞらえている。






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