漢詩と中国文化 |
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初發嘉州 蘇軾 |
蘇軾の五言古詩「初めて嘉州を發す」(壺齋散人注) 朝發鼓真真 朝に發すれば鼓は真真 西風獵畫旃 西風 畫旃を獵す 故郷飄已遠 故郷飄として已に遠く 往意浩無邊 往意浩として無邊なり 朝船に乗って出発すれば見送りの鼓が鳴り響き、西風が帆をはためかす、故郷はあっというまに遠ざかり、これから向かっていく先が延々と控えている 錦水細不見 錦水細やかにして見えず 蠻江清可憐 蠻江清くして憐むべし 奔騰過佛脚 奔騰佛脚を過ぎれば 曠蕩造平川 曠蕩として平川に造る 錦水の流れは背後に去って見ることは出来ず、蠻江の流れが目の前に清い、ほとばしるようにして仏脚のもとを過ぎれば、川の流れは広々と緩やかになる 野市有禪客 野市 禪客有り 釣台尋暮煙 釣台 暮煙を尋ねん 相期定先到 相期す定めて先づ到らんと 久立水潺潺 久しく立たたん水の潺潺たるに 野市にいる禅僧を訪ねていこう、今頃は釣でもしていることだろう、到着したら真っ先に尋ねると約束したからには、今頃は首を長くして待っていることだろう 蘇軾の詩人としての出発は、母の喪が明けた24歳頃のこと、父蘇洵、弟蘇轍とともに、故郷眉州を離れ、首都開封に向かう船旅の中で詠った詩に始まる。 それに先立って、蘇軾は21歳の時(嘉祐元年)、父弟とともに、蜀の桟道を超えて首都の開封に至り、めでたく科挙に合格していた。だが翌年、母の死の知らせに接するや、父弟ともに故郷の蜀に戻っていた。 母の喪が明けると、蘇軾は再び父弟とともに、開封を目指した。その旅の途中で詠じた詩がこの偉大な詩人の詩作の出発点となったわけである。 「初發嘉州」と題するこの詩は、蘇軾にとっては、実質的な処女作ともいえる作品。かの李白が、故郷の蜀を出て、長江を下る途中に詠じた「峨眉山月歌」を想起せしむ。 なおこの詩には「是の日、郷僧宗一と釣魚台の下に会別せんことを期す」との自注がある。 |
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