イタリア紀行
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イタリア紀行その十四:ナポリ市街


(ムニチーピオ広場)

九月三十日(水)快晴。この日はナポリに日帰り遠足をなさんとて八時過にホテルを辞し、テルミニ駅より八時四十五分発ナポリ行特急列車フレッチャロッサに乗る。列車は二十分ほどしてフィレンツェ行の時同様田園地帯に入りぬ。緑が心持濃く感ぜらるるは南へと向ひをるためなるべし。ナポリ駅に近づくにつれ高層の建物を目にす。ローマには見ざる光景なり(尤もナポリ都心に高層建築を見ることなし)。

駅を出でてまづタバッキを探す。なかなか見当たらざれば路上に佇みをるイタリア男に向かってドーヴェ・イル・タバッキと声をかけしところ、身振り手振りを交へながら早口のイタリア語もてなにやら説明しをりしが、そのうち自分について来いと言ひて歩き出せし故その後に従ふ。ややして一軒のタバッキに導かる。余地下鉄バス一日共通券を求めしがここにては扱ひをらずと言ふ。男再び余を促して駅に向かって歩き、駅構内なる別のタバッキに案内す。ここにて目的を達したり。男余の満足せる表情を見て我にコーヒーをご馳走せよと言ふ。余コーヒー代として数ユーロを与へたり。

ナポリ駅前ガリバルディ広場よりバスに乗りムニチーピオ広場に向ふ。車内すさまじき混雑振りなり。脇に立ちゐたる少女に向ってムニチーピオにて下車したし(ヴォレイ・シェンデレ・ア・ムニチーピオ)と言ふに少女親切に応接しムニチーピオへの到着を知らしむ。ムニチーピオとは市民広場と言ふほどの意味なり。ナポリ市街の中心に位置しナポリ観光の拠点たりとガイドブックにあり。


(カステル・ヌオーヴォ)

ムニチーピオ広場に面してカステル・ヌオーヴォ立てり。フランスのアンジュー家が十三世紀に建てたる城砦と言ふ。ナポリ湾に面し展望頗る良しと言ふ故一人六ユーロを支払ひて入城す。されど海を一望しうるところを見ず。城の頂上に立てば一望を得らるべしと思ひ、従業員を掴まえルーフトップに上る経路はいづくやと聞きしが屋上には上るべからずと言ふ。六ユーロの入場料はどうやら無駄金になりたるが如し。


(プレビシート広場)

ヌオーヴォ城に隣接して王宮の建物あり。目下修復工事中なり。この王宮を回り込んで西側に抜ければプレビシート広場あり。広場の入口に一の公衆便所あり。半地下式の便所に下りれば一組の男女便所を守りゐたり。男のほうに一ユーロコインを手渡すに客をエスコートして個室に案内すという仕掛けなり。便所守のゐる公衆便所は珍しからざるといへど、一々エスコートして用をたらしむるものは稀有と言ふべし。


(サン・フランチェスコ・イン・パウラ聖堂)

プレビシート広場の西側にサン・フランチェスコ・イン・パウラ聖堂なるもの立てり。石造りの優雅な建物なり。


(サンタ・ルチーア通り)

プレシビート広場を出でてサンタ・ルチーア通りを歩む。エクゾチックな雰囲気の漂ふ通りなり。ナポリ民謡サンタ・ルチーアはこの通り周辺の生活ぶりを歌ひしものなる由。

この通りのとばくちに小公園あり。そこにて男女の抱き合ふ姿を見る。男女の前には数人の青年群がり、男女の抱き合ふを見て冷やかしの言葉を発してあり。中には今にも悪戯に及ばんとする者もあり。長閑な光景と言ふべし。


(カステル・ドーヴォ)

サンタ・ルチーア通りの先にはカステル・ドーヴォ(卵の城)なるもの海に張り出すやうにして立てり。十二世紀に建てられたる古城にて卵の如き形からカステル・ドーヴォと呼ばるるやうになりし由なり。


(ナポリ湾沿いの眺め)

カステル・ドーヴォは無料解放してあり。城内より周囲の景色を一望することを得る。海に張り出すやうに作られたれば、百八十度の視界を以てナポリ湾のほぼ全景を眺め得るなり。視界の右手にはナポリ湾を望む傾斜地に沿って石造の建物層を重ぬるを見る。絶景と言ふべし。


(ヴェスヴィオ火山)

また左手にははるか海上の先にヴェスヴィオ火山の雄姿を見る。かのポンペイの遺構はこの山麓のいづこかにあるべし。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2015
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