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  聖橋(25×34cm クラシコ5 2004年6月)

広重の絵に昌平橋から茶渓を眺め渡した図柄のものがある。ご覧になった方も多いだろう。その構図は今日わたくしの描いたものにほぼ重なる。広重の絵に総武線や地下鉄丸の内線の鉄橋が出てこないのは当然である。聖橋も又見えない。悠遠たる渓谷が描かれているばかりである。

聖橋ができたのは昭和2年のことで、それまで人々は昌平橋を渡って湯島と駿河台を行き来していたに違いない。この橋を挟んで湯島の聖堂とニコライ堂が対峙していることから、自然聖橋と呼ばれるようになった。万世橋と同じくこれもコンクリートの橋だが、シンプルな構造の中にも美的な感覚に訴えかけるものをもっている。

昌平橋からの現代の眺めも、広重の絵に劣らず叙情を感じさせる。この構図を取り上げる画家や写真家は多い。わたくしがスケッチしていた日にも若い画学生が隣でこの図柄の油絵を描いていた。失敬して覗き込むと、彼のほうは縦長の構図の中に、総武線の鉄橋を強調するようにして描いていた。無論あひるなどはいない。表現の仕方は人それぞれだ。