万世橋2(25×34cm クラシコ5 2004年6月)

1年半を経て再び万世橋を描いてみた。今度は前回と反対に、南側の橋詰から電気街の方向をにらむようにして描いた。電気街にはけばけばしい原色の看板が氾濫していて、背景としては甚だ都合が悪いのだが、それを逆手にとって、橋の量感が伝わるように心がけた。

身近にみると意外と複雑な構造だ。水面に下りるテラスが設置されているのは、昭和初期の川の利用形態を物語る遺跡のようでもある。今日は勿論船がここまで来ることは滅多にない。水面のごみの処理や川底の浚渫のために、平べったい作業船が時たま通るくらいだ。川面にボートを、テラスにあひるを描き入れたのは遊び心からである。

わたくしが腰を下ろしてスケッチしていた場所は公衆便所のすぐ脇にあって、場所取りとしては聊か無定見であったが、そこは好き者のゲテモノ食い、得心の行く構図を得るためには、時に身の危険さえ冒さずにはいられないこともある。こんなわけで、わたくしのスケッチは小用を足し終えてすっきりとした人々の、用後の気休めになったのであった。






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