厩橋(F4号 ウォーターフォード 2003年)

この優雅な曲線の三連アーチの橋を、隅田川に架かる橋の中で最も美しいという人は多い。なるほど流れるような線形は変化と調和を醸し出し、どの角度から見ても絵になる。だが優雅な姿に似ず、橋の骨格は頑丈そのものだ。鉄でできた太い橋柱にはびっしりと鋲が打ってある。装飾に馬を多く用いているが、これは名称に配慮した愛嬌であろう。

架橋されたのは昭和4年で、震災復興橋のひとつだった。初代の厩橋は明治7年、民間の有料橋として架けられた。木造の橋であった。それ以前は渡し舟が運行していて、御厩の渡しと呼ばれていた。蔵前に幕府の厩舎があったところからそう名づけられたという。船がよく転覆したので、三途の渡しと悪口をたたかれたこともあった由。とまれ新しくできた橋はこの渡しの名を引き継いだわけである。

橋ができたのを契機に、橋から湯島天神下までの間に大きな道路が開かれ、本所と上野広小路とを結ぶようになった。それが現在の春日通りである。橋の出現が都市の構造を変えるに至った一例である。






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