曳舟の踏切(28×35cm ヴェランアルシュ 2004年8月)

30台の前半曳舟駅近くの事務所に勤務していた頃、京島界隈でよく飲んだものである。事務所は明治通りが水戸街道と交わる手前にあったので、仕事がひけると仲間たちと誘い合わせ京島の街へと繰り出すのだったが、その際に関所のように待ち受けていたのが、この踏切なのであった。曳舟には京成と東武の二本の線が通っていて、曳舟駅もふたつあるが、この踏切は京成線のものである。

当時の京島は狭い路地を挟んで、戦災に焼け残った木造の長屋が続く風情のある街だった。そこにある飲屋も、安くて旨くてしかも人情にあふれた、いい店ばかりだったような気がする。

20数年ぶりに京島を訪れてみた。今回は東武線の駅で下りて曳舟川通りを渡り、京島の表通りに入ろうとしてこの踏切にさしかかった。左側が宝通りといって京島の中心街である。わたくしたちのよく入った店は踏切を渡ってすぐのところにあったが、いまはもうないようだ。中央の低い煙突は銭湯のもので、わたくしもかつて一浴したことがある。






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