人形町の路地(26×36cm ヴェランアルシュ 2004年9月)
人形町の原点は旧吉原と呼ばれた遊女町にあった。この辺は徳川初期には低湿地であったところを造成して公認の遊郭街となったのだが、明暦の大火後遊郭が山谷堀の方へ移された後は、三座が庇を並べる芝居町となった。こんな訳だから、江戸の昔から華やかな雰囲気に包まれ、一帯は飲食などの店が並ぶ一大繁華街を形成していただろう。
そんな名残か、いまでもこのあたりには老舗の料理屋やら古い店が立ち並び、また人形焼を商う店などもある。どういうゆかりか、夏には瀬戸物市が開かれたりもする。表通りから一歩路地に入ると、何の飾りもない仕舞屋が商家の間に挟まり立っていたりして、歩む人をして思わず立ち止まらせる。
この絵はそんな路地の光景を描いたものである。洒落た構えの洋食屋と並んで、古風な木造の仕舞屋がひっそりと立ち、玄関前の道端に鉢物を置いて道行く人の目を楽しませる。都心近い街中にこのような地味だが風情豊かな人々の暮らしぶりを見るのは、心楽しむことである。
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