浅草の町家(28×38cm、ファブリアーノ300g、2013年4月)

東京の下町と称される区域は、先の大戦で大方が焼き払われてしまったため、町のたたずまいに歴史の連続性を感じさせるものは少ない。それでも、町に住む人々の心意気には、徳川時代以来の江戸っ子かたぎというべきものが受け継がれていて、言葉の使い方から日常のしぐさの端々に、地域の伝統のようなものを感じさせる。

浅草は震災と戦災の2度にわたる災厄に見舞われ、そのたびに町は廃墟と化したが、いづれの場合においても、いち早く復興した。観音堂を中心に古い歴史を背負った町の風格のようなものが、一時の災厄にへこたれない強さをもたらしたのだろう。大方の地域が、復興の過程で無味乾燥な表情に変わってしまったのに対し、浅草は街の古い部分を捨て去らなかった。このため今日の東京の街の中でも、浅草はもっとも下町らしき風情を感じさせるのである。

浅草界隈を歩いていると、絵にあるような仕舞屋をいまだあちこちに見かける。おそらく戦後まもなく建てられたため、建築基準上の規制を免れてきたのだろう。

この絵にある女性などはごく平凡な庶民には違いないが、三社祭の季節には神輿をかついで、一抹の風情を添えるのだと思われる。街のあちこちに、このような人びとの心意気と風景を抱えられていることは、街にとっては幸いなことだ。






                       
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