神田須田町・きくかわ(26×36cm ヴェランアルシュ 2004年8月)
明治時代の小説を読むと、神田須田町一帯は東京で一番繁華な地域として描かれている。今でいう中央通りと靖国通りの交差点を中心に、一大商業地帯を形成していたらしい。
神田といえば徳川時代以来江戸の下町の代名詞でもあったが、須田町一帯はその中心地域として、明治になって急速に発展したもののようである。
現在では、
丸の内や大手町など都心業務地域に接する周縁オフィス街のような位置づけになっているが、古い街柄を反映してか、オフィスビルと並んでレトロな店舗が建っていたりする。
この絵は神田駅を北側に少し進んだ交差点の風景である。赤茶色のレトロな構えの店の前に大勢の行列ができているので何だと思ったら、大串のうなぎを食わせる店だということだ。折から真夏の暑い昼下がりのこと、暑気払いのためにうなぎでも食おうとする人々なのだろう。構えはたいそう古めいているが、創業は昭和のそれも戦後のことだという。ちなみにきくかわという名のこの店の名物は価2500円のうな重なる由。