皇居前広場の噴水(28×35cm ヴェランアルシュ 2004年5月)
かつてフランスの批評家ロラン・バルトが東京を批評してこういったことがある。
「東京にも中心というものはある。だがそれは巨大な無である」
西洋の共和国の市民から見た東京の中心は、一般市民の目には見えない別格の存在として映ったらしい。
東京駅の赤レンガから皇居に向ってまっすぐに伸びる広い通りを、通称行幸道路という。秋には路傍に並んだ公孫樹が鮮やかに色づく。その道を歩き、掘割に架かった橋を渡ると、すぐ右手の
広場に絵にあるような噴水がある。ここには一年を通じて人々の安らぐ姿が見られる。この日はあたかも初夏の日差しのやさしい日だったので、小さな子どもをつれた若い夫婦の姿が多かった。
舞い上がった水が乱れ飛ぶ様子にこどもが夢中になっている。その行動をみていると、東京の中心部にも案外日常的な側面があるようにも感ぜられる。噴水の向こうにかすんで見えるのはパレスホテルである。