水彩で描く東京風景
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湯島天神・女坂:水彩画・東京風景



湯島天神・女坂(25×34cm ヴェランアルシュ 2004年11月)


湯島天神の創建はたいそう古い時代のことに属する。そもそも雄略天皇の二年というから西暦458年、天之手力雄命を祀ったのが始まりだとされる。降って正平十一年(1355)郷民が菅公を勧請して合祀した。以来湯島の天神様と呼ばれるようになったらしい。

神社は大抵森の奥や台地の端に立ち、参詣のための坂を伴っているものが多い。湯島天神にも緩急二つの坂があり、それぞれ男坂、女坂と称されている。絵は女坂のほうを描いたものだ。名から受ける印象以上にきつい勾配である。古い時代にはこの坂の上からの眺望はよかったに違いない。広重も坂の上から不忍池を望む光景を描いている。

坂下の一帯は往時は天神下と呼ばれ繁華な地であった。今も池之端につながる飲屋街にその面影を留めている。この辺は先の戦争にも焼け残り、最近まで古い木造建物が多く残っていたそうだが、今は特徴に乏しい街並に変ってしまった。だが坂の上り口に床机を構えて手相占いをする光景に、この街にすむ人々の伝統意識のようなものを感じるのである。




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