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      烏森の路地(34×25cm ヴェランアルシュ 2004年10月)

新橋の駅前広場に蒸気機関車が展示されたのは鉄道100年を記念してのことという。新橋から我が国発の蒸気機関車が走ったのは明治5年
(1872年)であるから、それから100年後というと昭和42年のことである。その前年には、新橋のランドマークとでもいうべきニュー新橋ビルが完成しているから、この前後の時期に今の新橋の形が出来上がったのだろう。それまでば戦後の闇市の雰囲気を残した雑然たる地帯だった。

広場の先には中高層のビルに覆われた街区がある。その中程に一本小さな路地が口を開けているので中に進んでゆくと、思いがけない眺めが待っていて驚かされる。まず神社がある。烏森稲荷といって大そう古い由緒をもつものだそうだ。神社の周囲には木造の低い屋根の建物が立ち並び、なつかしい縄のれんが掛かっていたりする。忖度するに表層は近代的な装いに変わっても、中身は古い時代のままに残されたようである。

絵はそんな路地の雰囲気を表現しようとして描いたもの。東京とは、こんな部分を包み込みながら少しづつ変化してゆく生き物のような街だ。