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吉備大臣入唐絵巻:鎌倉時代の絵巻物 |
(吉備大臣入唐絵巻:一段1、縦32.2cm、ボストン美術館蔵) 吉備大臣入唐絵巻は、奈良時代の学者官僚吉備真備が、遣唐使として唐に渡った時の不思議な物語を絵巻にしたもの。物語そのものは大江匡房の「江談抄」に収められており、またこの部分だけを抜き出したものが「吉備大臣物語」として伝わっている。 吉備真備一行の船が唐の港に着くと、官人たちが彼を拉致して高楼に閉じ込めてしまう。その夜半、嵐の中を恐ろしい鬼が現れ、自分は安倍仲麻呂の霊であると告げ、吉備を助けることを約束する。その後、吉備は唐人から様々な難題を課せられるが、鬼の助けを得て次々と克服していく、というものである。もともとの物語では、吉備は遣唐使の役目を果たして日本に帰国することになっているが、現存する絵巻には、その部分は入っていない。 絵巻は当初、六段からなる長大なものであったが、ボストン美術館の所有になって以降、展示の都合から四巻に分断された。 成立したのは12世紀末から13世紀初めにかけて。描き方に伴大納言絵巻の影響があることが指摘されている。おそらく同一画派内(常盤光長の系統)で、後世の人の手になったものだろうと思われる。両者ともに若狭の遠敷神社に伝来していた。 上の絵は第一段から。港についた吉備を唐の官人たちが出迎えて、連れて行くところ。束帯姿の吉備は、つくり絵の技法により丁寧に描かれているが、唐人たちは一筆書きであっさりと描いた上に彩色を施している。 (吉備大臣入唐絵巻:一段2) 同じく第一段から。官人が吉備の到着を皇帝に報告する場面。皇帝や官人たちの服装や宮殿内の様子は、唐絵の伝統を生かしたものだろう。 |
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