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雪舟の世界:作品の鑑賞と解説


雪舟は、日本の美術史上、個人の名が前面に出た最初の芸術家と言える。彼以前には、日本の芸術は、基本的には匿名作品だった。鳥獣戯画の作者とされる鳥羽僧正は、実在の芸術家というより、象徴的な意味を持たされた存在だったといえるし、運慶や快慶は、確かに個人として卓越した技術を持っていたが、歴史的には個人としてよりも、技法の集団を代表するという意味合いで言及されることが多かった。特定個人の名と結びついた芸術が日本に現れるのは、雪舟以後と言ってもよい。


雪舟は、応永二十七年(1420)備中で生まれ、永正三年(1506)周防で八十七歳で死んだ。彼が画家として活躍し始めたのは応仁の乱前後のことで、日本は戦乱の世であった。それ故雪舟は、都に定住することができず、各地を転々とした。周防で死んだときも、大内氏の縁故をたより、客分として滞在していたときであった。

こうした放浪にかかわらず、雪舟の作品は、比較的若い時期からから日本中に知られていたようである。彼は画家であるとともに、禅僧でもあったので、当時の日本の知識人階級であった禅僧のネットワークを通じても、世の中に広く知られるきっかけを持つことができた。雪舟の若いころの作品は残っていない。京都の相国寺で修行し、その際に画僧であった春林周藤に師事したことがわかっている。周藤は、中国の南画を手本にしながら、日本独自の繊細な絵を描いたようである。この周藤から認められた雪舟は、等楊という名で、絵を世に出すようになる。雪舟にとって大きな転機になったのは、応仁元年から約二年間明に留学したことである。雪舟は、当時の日明貿易の拠点であった周防から、明に渡った。帰朝後も、周防に滞在する期間が長く、彼の残した作品の多くは、周防に伝わってきた。

雪舟の今に伝わる最初の作品は、この在明時代に描かれた四季山水図である。この絵は、当時の明の宮廷画壇の影響を強く反映している。雪舟の初期の画業は、中国の影響を受け止めることから始まっているのである。李在、夏珪、李唐、梁楷といった中国の画家の画風を模倣した絵を多く残している。雪舟が、中国の画風を模倣することから、自立した画風を感じさせる絵を描くようになるのは、秋冬山水図以降のことだといえる。この作品は、雪舟の画業の前半を飾る傑作であり、文明八年(1476)雪舟馬歯五十七歳の年の作である。雪舟が遅咲きの天才であったことをうかがわせる。

雪舟の画業の頂点は、文明十八年(1486)、六十七歳の年に描いた四季山水図巻(山水長巻)である。これは、雪舟が画業の前半に多く手がけた山水図の総仕上げと言えるとともに、雪舟の画業の頂点ともいえるものである。山水長巻以降を、雪舟の晩年といえるが、雪舟は晩年に自由闊達といえるほど、のびのびと製作した。テーマも広がり、山水図のほかに、鳥獣図や人物図なども手がけるようになる。

雪舟は八十七歳の高齢で死ぬのだが、死の直前まで、旺盛な製作意欲を見せた。天橋立図は八十二歳以降の作であるし、山水図は死の直前に仕上げたと考えられる。このように雪舟は、幼い頃から禅寺に入って絵を学び、中国にわたって当時の中国画の真髄を身につけ、それらをもとにして次第に自分独自の世界を作り上げていった。彼の画業は、こうした旺盛な製作意欲に裏打ちされていたわけであり、そのエネルギーがあったからこそ、雪舟を日本で最初の本格的な芸術家に高めたのだと思われる。ここでは、雪舟の作品のうち代表的なものを取り上げて鑑賞したい。雪舟の作品は水墨画を基本として、それに淡彩を施すといった技法が骨格になっている。ここではそんな雪舟の代表的な作品を取り上げ、画像を鑑賞しながら適宜解説を加えたい。


四季山水図(春):雪舟渡明中の水墨画

四季山水図(夏):雪舟の水墨画


四季山水図(秋):雪舟の水墨画

四季山水図(冬):雪舟の水墨画

四季山水図(春):雪舟の山水画

四季山水図(夏):雪舟の山水画

四季山水図(秋):雪舟の山水画

四季山水図(冬):雪舟の山水画

雪舟の倣夏珪山水図

雪舟の山水図巻(春夏)

雪舟の山水図巻(秋冬)

倣李唐牧牛図:雪舟

黄初平図(倣梁楷):雪舟

雪舟の山水小巻

山水図屏風(左隻):雪舟

山水図屏風(右隻):雪舟

秋景山水図:雪舟

冬景山水図:雪舟

雪舟の山水図

益田兼尭像:雪舟の肖像画

花鳥図屏風(右隻):雪舟

花鳥図屏風(左隻):雪舟

雪舟の山水長巻(一)

雪舟の山水長巻(二)

雪舟の山水長巻(三)

雪舟の山水長巻(四)

花鳥図屏風二(右):雪舟

花鳥図屏風二(左隻):雪舟

雪舟の猿猴図屏風

雪舟の破墨山水図(一)

雪舟の破墨山水図(二)

恵可断臂図:雪舟

杜子美図:雪舟

天橋立図:雪舟

山水図:雪舟の絶筆





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