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毛槍奴立小便図:白隠の漫画




この絵は、毛槍奴が立ち小便している様子を子どもたちが見て囃したてているところを描いたもの。右側の賛に「毛槍をもって立てししす」とあるのは、「毛槍をもって立ち小便する」という意味。左側の賛には「しかも大きなしじじゃ、小じゃりが飛ぶは、あれ見よ」とある。「しかし大きなちんぽこじゃ、小便の勢いで小石が飛んでいる、あれを見てごらんよ」という意味である。

毛槍奴というのは、大名行列の先頭をつとめて、身をくねらしながら毛槍でパフォーマンスを行い、行列に威風を添える役割を果たしていた。大名行列の花形的存在だったわけだ。その花形の毛槍奴を、白隠は風刺の対象としたのだが、それによって大名行列の虚勢を批判したのだろうと思われる。

先述したように、白隠は「辺鄙以知吾」などの著作で、大名の華美を批判し、つまらぬ虚勢のために民に迷惑をかけないように主張していたが、この作品にはそうした批判意識が籠められているのだろう。

奴の大きな男根は、大名行列の虚飾のシンボルであり、それを小さな子どもたちがはやし立てることで、大名の浮ついたありさまを痛烈に批判したのだと受け取れる。



これは奴の部分を拡大したもの。小便が勢いよく出るところがユーモラスに描かれている。着物に金の字が書かれているのは、万事金が物を言う世の中を風刺しているようだ。

(紙本墨画 37.8×53.7cm 大阪市新美術館蔵)






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