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相州箱根湖水、甲州三坂水面:北斎富嶽三十六景



(相州箱根湖水)

箱根の芦ノ湖から見た富士。元箱根あたりから見ると、現在でもほぼ同じように見える。ただし、富士はもっと大きく見えるはずだ。右手の建物は箱根神社だろう。

芦ノ湖の水面は静かに澄み渡り、周囲一面に霞がたなびいている。その霞の描き方や森の描き方はやや類型的で、そのためかこの絵は全体的におとなしい印象を与える。このシリーズの絵の中では、動きも乏しく、どちらかというと駄作の部類に属すると評価されている。

ともあれ北斎は、この絵で、箱根山中の幽玄な趣を表現しようとしたのだろう。


(甲州三坂水面)

甲州御坂峠から眺望した富士。手前の湖は河口湖である。北斎は、その河口湖の水面に映った逆さ富士を描いたつもりなのだろうが、一見して大きな矛盾が見られる。まず、逆さ富士がだいぶずれて湖面に映っていること、現物の富士が真夏の姿なのに対して、逆さ富士のほうは雪を冠した春の姿だということだ。

また、夏の富士にしては、山肌の描き方が殺風景すぎる。薄い茶色のグラデーションを施しており、まるで裸山のように見える。

この絵にも、箱根の絵と同様人間の姿はないが、その代わりに船を描き入れることで、人の気配を暗示している。







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