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東海道程ヶ谷、相州江の島:北斎富嶽三十六景



(東海道程ヶ谷)

東海道程ヶ谷は、日本橋を出立して四つ目の宿場。松並木がトレードマークだったらしく、北斎はその松並木の合間から覗いた富士を描いている。この松並木の描き方がユニークだ。一本ずつ規則的に並ぶのではなく、二本ずつ対をなしながら並んでいる。このように松を二本一対にするのは、当時流行っていた盆栽の趣向で、文人文様の双樹と言った。北斎は盆栽の趣向をこの絵の中に取り入れたようなのだ。

絵の手前が東海道で、そこを行きかう人々が描かれている。左手の籠かきは、一人がしゃがんで草鞋をつくろっているのを裸の相棒が見守っている。その男が裸なのに、籠に乗っている女は何故か厚着姿だ。中程の馬子は、左手で鞭を持ちながら富士を眺め、右手の虚無僧は笠を持ち上げて前方を見ている。人それぞれに、細かい動きが何気なく感じられて面白い。

富士は、八本の松の丁度真ん中に位置している。頂上から麓にかけて雪が残っているところからみて、季節は春から初夏にかけてというところか。


(相州江の島)

片瀬海岸から見た江の島。現在はコンクリートの堤で本土と結ばれているが、当時はこのように砂州で繫がっていた。したがって満潮時には沈没し、干潮時にのみ渡ることができた。この絵には、砂州を渡って江の島を往復する人々が数多く描かれている。

左手の、小高い丘のうえに突き出ているのは、江の島弁天堂の三重の塔だろう。弁天堂に至る参道の両側には、茶店の類が軒を並べている。徳川時代から繁盛していた証拠だろう。

この絵の構図は、七里ヶ浜のものとよく似ている。江の島と比べた富士の大きさなど、こちらの方がずっとリアリティに富んでいる。







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