佐倉高校への道(35×28cm 2005年12月)

佐倉高校は鍋山という小さな岡の上にある。鍋山は佐倉の市街が乗っかっている岡の隣にこぶのように付き従っており、両者の間は浅い谷になっている。従って佐倉の市街に住む者がこの学校に通うためには、一旦谷に下りなければならない。

わたくしは宮小路にあった家から歩いてこの学校に通った。少年の早足で20分くらいの道のりだったろう。卒業して以来わたくしは高校時代のことなどすっかり忘れてしまい、自分がどんな道筋をたどって通学したのかも思い出せなかったが、ある時袋町にある寺に墓参りをした帰りに、弥勒町辺で絵にあるような坂道を見出して、これがあの佐倉高校へ通う道であったことを突然思い出したのであった。これまで何度も通りかかりながら気にもならなかった道が、何故かくも訴えかけてきたか、その時のわたくしは不思議な感に打たれたものである。

今は初老の人となったわたくしがこの坂道を下っていく。かばんの中に少年時代の思い出を少しだけ詰めて。あの頃この坂道は泥の道で、下った先の谷間には家が一軒だけ立っていた。再び坂道を上り、尾根状の道を歩いていくと、もうひとつのゆるやかな坂を隔てて、その先に佐倉高校があった。




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