上野図書館(36×26cm ヴェランアルシュ 2006年8月)                 
 
上野の山に数ある文化施設の中でも、最も古い歴史を有するのは、上野の図書館として親しまれてきた国立子ども図書館の建物である。

その歴史は明治五年創設の書籍館にさかのぼる。明治二十三年東京図書館、明治四十年帝国図書館と改称、戦後の昭和二十二年に国立図書館と改められた。昭和二十四年、国立国会図書館が国会議事堂傍らの現在地に建立されるや、当館は国立国会図書館支部となり、蔵書の大半を新設の中央館に引き継いだ。この辺の事情は、都立の日比谷図書館が有栖川公園内の新図書館に中央館機能を引き継いだ過程とよく似ている。

ちなみに、上野公園内にある文化施設のうち古いものといえば、東京芸大の前身たる美術学校及び音楽学校が明治二十年の創設、東京国立博物館の前身たる帝国博物館が明治二十二年の創設である。国立の科学博物館や西洋美術館、都立の文化会館や美術館はみな戦後に創設されたものばかりである。

こうしてみると、この図書館がいかに伝統あるものかがわかる。古い小説など読むと、しばしば上野の図書館として、日本の図書館の代名詞のように扱われているが、歴史的背景を踏まえれば、その辺の事情がよくわかるのである。

建物の外観もなかなか荘重で、絵になるさまを呈している。灰色のすっきりした色調をベースに、壁面の複雑な凹凸、タテ方向に細長く延びる窓の線など、味わうに足る意匠である。

近年子どもの文化が見直されるにつれ、絵本を含めた児童文学も一のレッキとした文化領域として認知されるようになった。このような時代背景から、上野図書館は児童書を専門に扱う図書館として生まれ変わった。聞くところによると、世界中で発行される児童書を収集閲覧する由である。

この日、館内では世界児童書展なるものが催されていた。エレベータで三階に上がると広い展示室があり、そこに世界中の児童書が陳列展示されている。無論原書である。文字はともかくとして、絵は見て楽しいものが多かったが、何せ書物の一ペ−ジを開いただけの示し方が素っ気ない。できうれば原画の複写でも展示してもらえれば、一層ありがたいものである。





                 

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