四方山話に興じる男たち
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ハンブルグへ:独逸四方山紀行



(ハンブルグの投宿先ホテル・ベルモーア)

ハウプトバーンホフよりイーツェーエー(都市間高速鉄道)に乗りハンブルグに行かんとす。列車に乗り込むに、運行せず。しかもアナウンスなし。何事が出来せるや判然とせざるまま座席に座りをるに、暫時小出しにアナウンスあり。谷子が言ふには、どうやら事故のために出発を見合しをるやうなり。事故はハノーファーにて起きたるやうなれど、如何なる事故か説明なし。しかれば乗客らもそのうち運転すべしと思ひてか、そのまま待機せり。

後から乗り込みたる乗客に様子を聞くに、ハノーファー駅にて列車事故あり、目下復旧中の由、何時復旧するかは判然とせざれど、今夜中には復旧すべし、自分らはそれを待つつもりなりと。

その情報を得て余らも待機することとす。しかるに暫時して車掌ら現はれ、列車は運行中止と決したれば速やかに下車すべしと命ぜらる。その理由を一切説明せず。理由を知りたければインフォルマツィオンに行けといふのみなり。やむなく下車す。

地上階なるインフォルマツィオンに赴けば、すでに問ひ合わせを求むる者長蛇の列をなせり。列に並ぶこと暫時、係員より説明を聞くに、ハノーファー駅にて落雷事故あり、復旧の見通しなし、されど今夜中に復旧せずとも断言せず。今夜中の復旧を期待するものはそのまま待つべし、しからざるものは明日以降来るべし。いづれにしても、代替乗車券を発行すべしと。

状況分析の結果、一同今夜はベルリンに延泊し、明朝の列車に乗るべしと決意す。しかしてハンブルグのホテルに事情を説明してキャンセルの意思を伝へ、ベルリン市内にホテルを求めんとす。あたかもベルリンの町には雨そぼふりたり。この雨雲がハノーファー駅に落雷をもたらせるが如し。

しかるに谷子あちこちと動きまはるうちに、別の経路よりハンブルグ行の代替交通手段の情報を仕入れたり。それによれば、Sバーンのシュパンダウ駅より、別のハンブルグ行イーツェーエー列車発着すといふ。それに乗れば今宵中にハンブルグに至るべしといふことなれば、急遽方針を変更してシュパンダウ駅に至り、そこよりイーツェーエーに乗らんとす(この路線はシュヴェリーン経由なれば、ハノーファーの事故の影響を受けざるなり)。

Sバーンにてシュパンダウ駅に至り、インフォルマツィオンにて状況を聞くに、ハンブルグ行の列車は通常運行なしをるとのことなり。欣喜雀躍して来合はせし列車に乗り込む。車内混雑甚だし。余らは先頭車両と二両目との間の通路に腰を下ろせり。不可解なるは、二両目の座席を封鎖してあることなり。座席に縄を張り、乗客の着席を許さず。車内混雑甚だしく、通路の床に腰を下ろすもの多かる中に、この処置は何ぞやとすこぶる疑問を覚えたれど、ドイツ人乗客は不満をもらさず。諦念の表情を以て床に座りこみたり。その光景を見て、余大いに驚く。ドイツ人は権威に対して従順なるが如し。日本にては考へられぬことなり。



八時頃ハンブルグ・ダムトーア駅に至る。駅前一帯はハンブルグ大学なり。大学構内に余らの宿泊先たるホテル・ベルモーアあり。このホテル大学施設を転用したるものにて、主に大学関係者を宿泊せしむといふ。この日は、ハンブルグ大学内にて大規模イベント開催され、宿泊するもの頗る多かる由。そのため、宿泊料金普段に倍すといふ。大学施設とはいへ、部屋の雰囲気悪からず。ベルリンのアパルトメントに比すれば格段上等なり。

チェックインして後、鉄道線路を越えてハンブルグ市街方面に向かって歩き、さるイタリアレストラン(リストランテ)にて夕餉をなす。イタリ料理数種を注文するに、いづれもすこぶる美味なり。けだしイタリア人の経営するところによらんか。ドイツ料理よりは余の口にあひたり。

入浴して日記の整理をなして後就寝。はや深更を過ぎたり。


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