四方山話に興じる男たち
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カッセル漫歩:独逸四方山紀行



(カッセルのトラム)

六月廿六日(月)陰、時に雨。七時起床。窓より駅前広場を見下ろすに、早くもトラムの運行始まれるやうなり。この町は、さして広大にはあらざれど、隅々までトラム通じ、住民はいづこに行くにもこれに乗りて行くを得るが如し。さればなるべし、自家用車の数は多からざるやうに見かけたり。

この日は谷と残余の三名訣別すべき段取りなれば、その前に駅構内の食堂にて共に朝餉をなさんとて、八時にホテル玄関前の野外席に集合す。ホテルの朝食料きはめて貴ければなりと、谷子言ふ。

さて、ホテルの玄関横に一の銅像置かれてあり。ヘッセン侯ウィルヘルム一世像なり。このホテル、ベストウェスタンホテルといひて、ヨーロッパ中にフランチャイズ展開し、余が先日宿泊せしローマのホテルも姉妹館なり。ここカッセルのホテルは、別名をウィルヘルム一世ホテルと称し、かくの如く玄関前に侯の銅像を置けるなり。



像をつぶさに見るに、身体に比例して両手のサイズ異常に大なり。ヨーロッパ人の常識に、手のサイズは陽物のサイズに正比例すといふ。されば手の大なる者を見れば、あの部分のサイズも自づから推し量らるるなり。手も陽物もともに、大なるものはその大なるに応じて女を喜ばしむ。されば大きな手を持ちたるものは、それのみを以て女の歓心を買ふといふことなり。余思へらく、手の大きさも適者生存のあらはれなるか、と。

八時、駅構内に赴き、パン屋にてサンドイッチを買ひ、テーブルに座して食ふ。卓上、話題インターネット・ニュースに及ぶ。目下日本にて行はれをる都議選において自民党の苦境深刻なりといふ。一同の認識一致したるところは、いまの自民党は、国民を愚弄して毫も怖るるところなし、かかる輩には、一度きつく灸を据ゑてやるべきなり、と。

駅構内のATMにて両替をなし、九時半、チェックアウトして谷と別る。その後余ら三名はトラムに乗りて市街中心部に至り、そこにて時間の許すかぎりショッピングをなさんとす。すなはち何軒かの店を見歩き、ガレリアなるデパートにて土産を買ふ。余は家人のために熊のぬひぐるみなど買ひ求めたり。また、自分自身のためには野球帽を買ふ。昨日いづこかにて帽子を紛失したればなり。



ラートハウス前の広場にて休憩。その後、再びガレリアに赴き、三階食堂にて昼餉をなす。ブフェ方式にて、皿に盛りたる食品の重量に応じて課金すなり。浦子らは肉料理を盛りつけしが、余は野菜の類を盛り付けす。野菜の重量は軽ければ、課金せらるることもまた軽し。両子、余の小食ぶりを評していはく、それでよく腹がもつね、と。余答へていはく、小生は、車に譬へれば、燃費がよいのだよ、と。



食後さらに町を散策す。浦子一の酒精店を見出したれば、中に立ち入りて、アップルワインの酒精を買ひ求めんとす。店内多くの数の酒樽を並べたり。それぞれ酒精を貯蔵せり。浦子そのいくつかを試飲して後、気に入りたる味の酒精を買ひ求めたり。しかして言ふ、これは土産にはあらず、自分自身のための贅沢なりと。

トラムに乗り一時五十分ホテルに戻る。荷物を受け取り谷子の来るを待つ。彼なかなかあらはれず。やむなくホームに移動し、列車を待つところに駆けつけ来れり。

ホーム上谷子と別れて列車に乗り込むに、車内大いなる混雑ぶりなり。余らの予約席に先客座したれば、彼らを去らしめて座したり。列車は田園地帯の中を進み、次の移動地フランクフルトを目指したり。


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