四方山話に興じる男たち
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露西亜四方山紀行その一:モスクワへ



(モスクワ、スラヴャンカ・ホテル前にて)

九月十二日(水)八時半頃家を出で十時近く成田空港第一ビル北ウィング四階にて石、浦、岩の諸子と落ち合ふ。直ちにオンラインチケット窓口に並び荷物を預託。その後、浦子両替と損害保険の加入手続きをなす。交換レートは一ルーブリ二円数銭なり。実勢レートは一円八十銭前後なれば手数料の尊きを知るべし。

茶を喫す遑もなく出国窓口に並ぶ。十二時発モスクワ行SU261便なり。十二時三十五分に離陸す。

飛行機はヴラヂヲストーク上空にてロシア大陸に入る。眼下分厚き雲に遮られて視界開けず。ただアムール川と思しき大河の横たはるを瞥見するのみ。

十三時半頃昼食を供せらる。ビールを注文するに有料なり。値三百二十ルーブリなり。四百ルーブリを手渡すに釣銭として一ドル紙幣を返さる。ビールはぬるくてまづし。食事もまた味美ならず。夕刻にもまたまづき食事を供せらる。その折にはアルコールを飲まず。

モスクワに近づくに至りて、初めて雲間より下界の光景あらはる。湖沼森林の連綿としてつながるを見る。諸子がいふには、このあたりもフィンランドの湖沼地帯に連続しをるなりと。モスクワ時間午後四時二十分(日本時間午後十時二十分)着陸す。

入国手続をなす。出入国(ミグレーション)カードはパスポートの情報をもとにその場にてプリントアウトせらる。手際の良さに関心す。半券を出国カードとして交付せらる。これは出国の際に必須なれば亡失すべからず、と諸子に忠告す。

アエロエクスプレスに乗る。モスクワ都心行の高速鉄道にて、運賃一人当たり五百ルーブリなり。乗ること三十分あまり、沿線の光景は大都市郊外とも思はれず、長閑な風景つながりたり。午後六時過ベラルスキー駅に至る。ここにて地下鉄に乗り換ふ。地下鉄駅の深度大なり。百メートル近くに及ぶべし、その深さをエスカレータにて一気に下るなり。環状線に乗りノヴォスロボツカヤ駅に至り、そこより歩みてスヴォロフスカ広場をめざす。

途中道路の状態すこぶる悪し。至る所破損せられたるまま放置せらる。財政難のため公共事業はかどらざる影響なるべし。地下鉄の整備も同様なり。ホテル近くに新駅の構想あり、余はこの構想が実現せられたると思ひこみて、新駅近くのホテルを選びしなれど、いまだ完成せずしてあり。さればかかる遠距離を歩まねばならぬなり。

ホテルの場所は比較的わかりやすし。数人のロシア人に道を尋ねつつも、迷ふことなく到着することを得たり。ホテルはスラヴャンカといひて、結構壮大なる作りのホテルなり。スヴォロフスカ広場の近くにあり。

チェックイン後暫時休息。しばしして、タクシーを雇ひてレストランへ行く。タラス・ブーリバなるウクライナ料理店にて、地下鉄トルーブナヤ駅の近くにあり。そこにてチーズ、ボルシチ、チキンカツ、サケのステーキ、ビール、ワイン、パンを註文す。パンは肉餡入り蒸し焼きパンにて味なかなかよろし。ボルシチもそこそこの味なり。チーズの味もまた良し。

食後レストランにて水を買ひ求め、タクシーの手配を頼む。運賃五百ルーブリなり。先ほどの倍の価格なり。モスクワのタクシーはメータを用ひず、その場の交渉にて価格を決する由なり。されば同じ距離を走っても、その場の交渉の雰囲気次第で価格も変はるなりや。

ホテルに戻りしは十時半頃なり。それぞれ自分の部屋に散ず。ドイツ旅行の折は毎晩十二時過ぎにホテルに戻りしが、こたびは早めに戻らんと思ふなり。部屋もドイツのそれに比して広し。くつろぐには適したれど、バスタブを設けず、シャワーの設備あるのみなり。

疲労に襲はるるところとなり、部屋に入るやシャワーを浴びてベッドに臥しぬ。



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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016-2018
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