四方山話に興じる男たち
HOME ブログ本館東京を描く 日本文化知の快楽水彩画プロフィール BBS


露西亜四方山紀行その十四:ヲートカパーティを催す


三時頃カフェを去り、地下鉄にてセンナヤ広場駅に至り、ホテルに小憩すること一刻。五時過ぎて再び外出す。今宵は露西亜旅行最後の日なればとて、浦子さるヲーカバーにてヲートカパーティを催さんと提案す。さればタクシーにて赴くべしと、石子のスマホアプリを用ひてヤンジェクス・タクシーを呼び寄せんとす。携帯電話番号の入力を求めらる。石子の携帯番号を入力するに、外国ナンバーは受け付けずと返さる。ここにて初めて、ヤンジェクス・アプリを活用するには、ロシアのSIMカードが必須なりと気付きたり。

致し方なくホテルのフロント嬢に依頼してタクシーを呼び、ノーミェル・アヂンなるカフェに赴く。ここにてコンソメスープ、ポテトサラダ、魚の前菜、ビーフストロガノフを注文し、生ビールを飲みたり。余、ウェイターに向かってムール貝はあらざるやと尋ねしところ、ムール貝を喰ひたければ魚介レストランに行くべし、当店にてはムール貝を供さずと返さる。ムール貝を供せざる理由はいはず。

席上こたびの旅行を回顧す。アトラクションはおほむねよし、とくにコサックダンスはよし。バレーもよろしかれど、席に難ありき、と岩子いふ。私の席からは舞台が全く見えませんでした、安い席はいいのですが、安すぎて舞台が見えないのでは困ります、と浦子不満を述ぶるなり。

小生反省していはく、諸子の財布の状況を勘案して安価な席を用意したるなれど、舞台が見えないでは致し方がありませんね、これからは多少の銭を払っても、もっとよい席を用意するようにいたしましょう、と。さるほどにある人いはく、我々の年になっては、これからがあるかどうかわからんよ、と。

生ビールを飲み終ふるやヲートカを注文す。浦子例によって銘柄を物色し、もっとも高価なヲートカを注文す。余、財布の状況を心配して、二杯目からはもっと安価なヲートカを注文すべしと忠告す。浦子余の意見をいれ、二杯目は一杯目の半額のヲートカを注文せり。

そのうち楽師の演奏始まる。かれらまづ隣室から演奏を披露す。隣室には中国人の若者の集団宴会をなせり。その様子を見るに、中国人にしてはきりりとしたる印象なり。女も数多くゐたれど、やはりきりりとせり。余おもへらく、軍隊か警察の視察旅行ならんかと。

ヲートカの杯進むほどに、話題多岐にわたる。なかにも余が披露せし話は、トランプを巡るスキャンダルなり。今話題のストーミー・ダニエルスがトランプのペニスを批評していはく、巨大にしてマッシュルームの如き形状なり、わらは己の持物の壊れんことを恐れたりと。しかるに浦子、どういふわけか余の話に反発し、かかる下品な話を我の前でなすなかれと叫ぶ。高尚な話以外は受け付けぬといひたげなり。

されば話題を現下世間を賑はしをるカバナフのノミネーションに移す。カバナフはトランプの切札なれど、俄にスキャンダルにまきこまる。その原因はセックスにまつはるものなり。さる女性よりアテンプテッド・レイプを告発されたるなり。大統領ならまだしも最高裁判事にセックススキャンダルはタブーなるゆえ、カバナフのノミネーションは至極困難に陥るべしと。

浦子再びあきれ顔していはく、汝には下の話しかできぬのか、と。その潔癖なること道学者の如し。

ヲートカを飲み進むこと数杯、他の諸子はともかく、余はいたく酩酊せり。ウェイターに依頼してタクシーを呼び寄せ、ホテルに戻る。その時間を覚えず。



HOME| 次へ








作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016-2018
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである