四方山話に興じる男たち |
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政局の行方を聞く |
四方山話の会六月の例会がいつもの通り新橋の古今亭で催された。参加者は梶、六谷、岩、浦、石、栗、福の諸子に小生を加え計八名。今回のレポーターは六谷子、前回の浦子に続き日本のメディアについて話をした。 レジュメも作っておらず、今日のために特別に用意したこともないので、思いつくままに気軽に話してみたいが、その前に前回出席しなかった理由の説明をさせてもらいたい。そう言って六谷子は、前回出席できなかったのは、H君(小生のこと)のブログでも触れられていたとおり、友人が急死したためだったが、その死に方と言うのがなかなか堂々としていて、諸君にも参考になると思うので、ここでその様子を話したいと思うのだと言った。 僕はその友人と弓道の大会に出ていたのだが、僕より前に弓場に立った友人が、威風堂々として的に向かったままいきなりどずんと顔から倒れたのであった。それを見て慌てた僕らはすぐに蘇生術を施したが生きている反応がない。どうやら即死したらしい。後で下された診断によると大動脈剥離ということだった。その男は日頃から弓のほかにも様々な運動をし、とても簡単に死ぬようには見えなかったのだが、死ぬときはこのようにいとも速やかに死んだ。その死にざまたるやうらやむべきものがある。そう六谷子は言うのだが、なぜこの死が羨望に値するのか、そこのところがいまひとつわからなかった。諸君もこのように速やかに死にたかったら、日頃から運動をして体を鍛えるべきだと言いたいのか。 もうひとつ死を考えさせることが最近僕の身辺で起ったので、それも併せて報告させてもらいたいと言って、六谷子は丹沢で遭難した経験を語った。六谷子は最近友人ら五人と丹沢の仏果山を登山したのだったが、五人並んで尾根を歩くうちに、自分の眼の前を歩いていた友人がいきなり足をもつれさせて転倒し、谷間に向かって滑落した。慌てた彼らはすぐに消防に通報したところ、三十分ほどして三十人ほどの救急部隊が現れた。ついで警察官が十名ほど現われ、現場は騒然となった。結局友人はヘリコプターで救出され、自分を始めそのほかの者は救急隊にエスコートされて麓に下りたのだったが、その後に消防、警察、新聞メディアからそれぞれ事情聴取を受けた。今回は軽い程度ですんだので、聴取も簡単ですんだが、もし死んでいたらそういうわけにはいかなかったろう。つけても人間いつ何時災難に見舞われないともわからない。諸君も気をつけてくれたまえと六谷子は言うのだが、どんなふうに気をつけたらよいのか、小生などには見当もつかなかった。 そんなに沢山の人が救急出動し、ヘリコプターまで出たのだったら、後日しっかりと請求されるのではないかと誰かが言ったところ、いまのところ請求は来ていないし、これからも来ないだろうと言う。しかし他の同じようなケースでは、多額の請求をされたという話も聞くし、どういう基準で請求したり免除したりするのだろうと誰かが疑問を出すと、消防は自治体の管轄だから、自治体によって対応が違うのだろうと他の誰かが説明した。それにしても六谷子は何故、こんな話をする気になったのだろう。そこが小生にはいま一つわからなかった。 前置きの話を終えた後、六谷子はおもむろに本題に入った。本題と言っても明確なテーマがあるわけではない。一ジャーナリストとして日本の政治を見て来た感想を述べるやら、今後の政局の行方を占うといったものだった。六谷子が言うには、いまの日本の政治は一種の行き詰まりに陥っている。その最大の要因はやはり選挙制度だ。小選挙区制になったおかげで、日本の政治はおかしなことになった。だからこの制度を見直す必要があるというような意見を六谷子は述べたのだった。 六谷子が更に言うには、昔の政治家にはスケールの大きな人間が多かった。自分はそういう連中と付き合っていろいろ教えられることもあった。彼らは新聞記者の扱い方も心得ていて、面白くないことがあっていじめてみても、必ずその後でフォローした。自分もある政治家から散々いじめられて滅入ったことがあったが、その後でその政治家から育毛剤をプレゼントされたことがある。それでいじめたことを帳消しにしようというつもりだろうが、その気配りがうれしいではないか。今の政治家は気に入らないメディアを攻撃するだけで、まったくフォローがない。これは政治家が小粒になった証拠で、その理由は小選挙区制にある。そう言って六谷子は気を吐いたのだったが、小生などは六谷子の政治談議より彼が若い頃から禿げていたらしいことのほうが気になった次第だ。 六谷子は中国人の婦人たちを相手に日本語を教えているそうだが、彼女らに向かって日本の政治をどう思うかと聞くと皆一様にだんまりを決め込むのだそうだ。今話題の日大スキャンダルの事はこの婦人たちもよく知っていて、面白おかしく取り上げることもあるのだが、このスキャンダルと日本の政治とはよく似ていると思わないかと聞くと、やはり黙りこんでしまうそうだ。彼女らは日本の政治に口を出したりして、それがもとで日本に居づらくなるのを心配しているようだと六谷子が言うと、そういうこともあるかもしれないね、と誰かが言った。 いまの日本の政局については、六谷子は安倍政権はそう長く持たないだろうと予想した。その根拠は、スキャンダルがもとで国民から不信をかっていることだという。しかし不信をかったといっても、内閣支持率はいまだに四割程度あり、これが底だと言われている。いままでの例からして、これくらいの数字では内閣退陣には結びつかないのではないか。そう小生が述べたところ、いや安倍内閣はこれ以上持たないだろうと重ねて太鼓判を押すのであった。小生としてはそう願いたいところだが、安倍内閣に代わって政権を任せられるものがいるかと言えば、はなはだ心もとないというのが実情ではないか。 六谷子の話がひととおり終わった後、石子がロシア音楽のコンサートのチラシを皆にくばり、是非一緒に聞きに行こうと誘った。音楽グループの名はバラライカと言って、わざわざロシアから日本に公演に来るのだと言う。石子のお友達がこのグループに関係しているらしく、是非聞きにいってもらいたいと熱心にすすめていた。小生も都合が許せば聞きに行きたいと思った次第だ。 ここで次回のレポーターを誰にするかについていろいろ調整の結果、梶子がつとめることになった。テーマは何でもよいから、気軽に話してもらいたい。 散会後、石、浦、岩の諸子とロシア旅行の打ち合わせを行った。新橋駅に隣接する喫茶店で打ち合わせようと小生が提案した所、珈琲なんか飲むよりはウィスキーを飲みたいと浦子が言うので、そこら辺を捜し歩いてさるイタリアーノ・バルに入った。これがなかなか雰囲気のいい店だったので、打ち合わせも弾んだ次第だ。打ち合わせのなかでもっとも紛糾したのはヴィザの取得についてだった。これを他の三人は小生にやってもらいたい意向に見えたが、小生としては銘々自己責任で行ってもらいたい。ヴィザがないとロシアには入国できないので、くれぐれも粗相のないようにと強調した次第だった。 |
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