四方山話に興じる男たち
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赤坂で天ぷらを食う


四方山話の会の幹事会を兼ねた例の旅行同人の宴会を久しぶりに催した。場所は赤坂の天ぷら屋初穂。地下鉄の駅の一番出口を出て、一ツ木通りをやや進んだところにある。小雨の降る中を五時半に赴いた。他の三人はすでに席についていて、生ビールを飲んでいる。小生も生ビールを頼んで乾杯に加わった。その席上、さきほど地下鉄の車内で目撃したことを披露した。小生と同年齢と思しき男が、空いた席に座ろうとして脚がもつれ、隣の座席に座っていた母子の上に覆いかぶさったのだが、あわてて立とうとしたところ、更に脚がもつれて床に倒れてしまった。様子が尋常ではない。脳内になにか起ったかと思わせるようなありさまだ。周りにいた若い人が介助をして、次の駅で下ろしたので、老人である小生はとくに手出しをすることはなかった。ただ、自分もそうなったら困るな、と思ったところだった。そう話すと、他の三人もなにやら同情できるものを感じたように見えた。

この天ぷら屋は、浦子が見つけたもので、この二月に初来店して以来、これが四度目だそうだ。男ばかりでくるのは今回が初めてで、以前の三回はいづれも女性を同伴していた由、マスターが語る。短期間でなじみになったようである。天ぷらは一応コースになっていて、これから揚げるべき材料を大皿に盛ってあらかじめ見せてくれる。それを小生は付け出しか何かと勘違いして、早速食ってみろよと岩子に勧めたところ、それはこれから天ぷらにする材料だから食ってはならぬと釘をさされた。

その天ぷらの材料は山菜が主体で、タラの芽だとかフキノトウとか、世田谷のかぼちゃとか、自家栽培のマイタケなどもあった。マイタケは栽培技術が進んでいて、いまでは手軽に栽培できるのだという。スーパーで売っているのとは違って、身が引き締まっている。そのほか、小エビ、ほたて、キスなどがあった。それらをマスターが、われわれの目の前で揚げ、カウンター越しにサービスしてくれるのだった。

話題は、ウクライナ戦争に岸田首相が首を突っ込むことの是非だとか、いわゆる放送法文書をめぐる国会での乱痴気騒ぎなど多岐にわたった。ウクライナ戦争に岸田首相が首を突っ込んだことについて、小生は自身の所感をブログで公開していたところだが、それについて石子が、お前は相変わらず国家主義的な言説を垂れ流しているなと批判するから、いや、あれはブラックジョークさと受け流した。

今般日本中を熱狂させたWBCについても熱い議論を展開した。小生は、決勝戦での緊迫した試合ぶりと日本がそれを制して優勝したことについて、素直に喜んだといったところ、ほかの三人も同感だといった。あれは実にいい試合だったよ。

仕上げには、かき揚げの天丼を食った。シジミ汁つきである。これで満腹になった。では、二次会に出かけようということになったが、今宵の二次会では是非カラオケをやろうと小生から事前提案していたので、それを踏まえて浦子が四谷荒木町の例のガウチョおじさんの店に予約しておいてくれた。そんなわけで、地下鉄駅のタクシープールからタクシーに乗って、四谷を目指す。料金は1300円だったから、たいした距離ではないのだろう。

客は我々だけで、カラオケを独占できる雰囲気だったが、歌う前にまず談義すべきことがあるといって、他の三人が何やら熱心に議論し始めた。テーマは、政党の組織論である。頃日、ある政党の組織運営が非民主的だとして、マスメディアのいじりの対象にされたことなどを念頭に置きながら、民主的な組織のあり方とはどうあるべきかというのが、議論の焦点になった。詳細については、触れないでおく。

適当なところで議論を切り上げ、いよいよ歌おうということになった。そこへ若い女性のグループが五人ばかり店に入ってきた。彼女らと一緒では、大声を出して下手な歌を歌うわけにもいかないなと思ったところ、ガウチョおじさんは、今夜は予約でいっぱいだからといって、彼女らをていよく追い返してくれた。おかげで心置きなく歌えた次第だ。

スターターを命じられた小生は、都合四曲歌った。はじめに「Tombe la neige」をフランス語で、次に拓郎の「結婚しようよ」、覚えたてのスペイン語を披露するといって 「Quisaz, Quisaz, Quisaz」を、最後にロシア民謡の 「Дубинушка」(仕事の歌) を、ロシア語と日本語で歌った。これは、カラオケには入っていないというので、アカペラで歌った。浦子は「フランシーヌの場合」を歌い、石子はフランク永井の歌を歌い、岩子はご当地ソングを歌った。

こんなわけで、今宵は珍しく談論風発といった趣を呈しもしたが、最後は和気藹々たる中に歌を楽しむことができて、非常に満足した次第である。



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