イタリア紀行
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イタリア紀行その十五:ナポリ湾、考古学博物館


(ナポリ湾沿の散策路)

サンタ・ルチーア通りに面せるマリーナなるレストランにて昼餉を喫す。路上席に座して海風を受けながら食事するは洒落たものなり。店の前を通り過ぎる地元のものと思しき者の中には店員に気さくな挨拶をなして行く者もあり。人情の厚さを感ぜしむるなり。

食後ナポリ湾沿の道をメルジェリーナ港に向って歩く。散策するには素敵な道なれどメルジェリーナ港まで一時間近く要せり。とまれメルジェリーナに近づくほどに右手からは丘張り出し来りその傾斜に沿って建物何層にも重なりたり。海と丘のコントラストの美しきところなり。


(メルジェリーナ港)

メルジェリーナ港の桟橋を過ぎたる所にて右折するにややして地下鉄駅あり。構内行先の表示あらざればホームに立ちゐたる女性にムセオに行くにはこのホームにて可なりやと問ふ。女性答へて曰く、このホームより乗り三つ目のカヴール駅にて下りればムセオの駅とはつながりをると。すなはちホーム上に来れる列車に乗る。ローマの地下鉄に比すれば田舎びたる趣の車両なり。


(国立考古学博物館)

カヴールにて下車し緑道沿を西へ歩き国立考古学博物館の前に出る。古代ローマの美術品を収集展示せることにて名高きところなり。一階にはギリシャ・ローマの彫刻類を展示し二階にはポンペイの出土品を展示せり。

ローマの彫刻類はギリシャのそれの複製と言はるるほどギリシャ彫刻の影響強し。歴代皇帝の肖像などはギリシャの神々の像をモデルにして作られたり。さう言へば余が学生時代にデッサンの手本とせし石膏像の類はいずれもギリシャ彫刻を真似たるローマ時代の作品たりしことなど思ひあたるなり。


(フェルディナンド・ボルボニオ像)

彫刻類中最も迫力を感ぜしはファルネーゼの牡牛やらヘラクレス像なり。二階へ上る階段踊り場のフェルディナンド・ボルボニオ像も迫力あり。また一階中庭に巨大な石製の箱据ゑ置かれてありしが、これは石棺(サルコファーゴ)とのことなり。


(ポンペイ出土品)

ポンペイの出土品には土器、青銅器、硝子などの什器類やら絵画の類多数含まれてあり。中にも傑作は若い女性の乳房にしゃぶりつける老人を型どりたる土像なり。人間の好色ぶりは時代を超えて通じあふものの如し。ポンペイ出土の絵画類は独特の構成・色彩を感ぜしむ。ただしその多くは噴火時の火砕流の熱のために毀損せられてあり。とまれこの博物館を訪へばポンペイ美術の概要を把握しうるべし。





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