パリ紀行 |
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オルセー美術館:パリ紀行その七 |
十月五日(火)雨の振る中をオルセー美術館に往く。普通なら十四号線ビブリオテック駅にてRER−C線に乗り換ふるが便宜なれど、この日は地下鉄を乗り継ぐこととなす。RER線の車内余りに汚ければ、横子の二度と乗らぬと言ひ出せしが故なり。 まづシャトレ駅に下車して、ランジェリー通りなるショッピング街を歩まんとす。横子下着を仕入れたしと願ふ。それ故、ホテルのレセプション嬢に相談したるところ、シャトレのランジェリー通りを訪ねよと言はれしなり。 しかるにランジェリー通りのいづくなるを分たず。路上にて途方にくれをるところ、一の婦人 Can I help you といひつつ近づき来り、案内を申し出でらる。されどこの夫人も、ランジェリー通りのいづくなるかを知らず。苦笑して去りたり。 あきらめて再び地下鉄に乗り、マドレーヌ駅にて十二号線に乗りかへ、ソルフェリーノに下車す。道を歩むにスヴニールショップあり。余そこにてボールペンを求む。たまたまTシャツも売られてあり。横子下着の代はりにせんとて、二枚買ひ求めたり。 オルセー美術館前にはおびただしき数の人々列をなしてあり。余らもその列に並ぶこと四五十分にしてやうやく入館す。 ここはルーブルよりも更にチェック厳し。また館内にて撮影すること厳禁なり。 ルーブルが古典美術中心なるに対して、オルセーは近代美術を収集す。ほかに国立近代美術館ありて現代美術を収集す、この三館がパリの美術館の中心なり。 コレクションの花形はフランス印象派の絵画にて、それと前後してミレーなど印象派以前の作家及び後記印象派の作家を取りそろへたり。 印象派の作家としては、マネ、ルノアール、セザンヌ、シスレー、ドガ、ロートレックなどに見るべきものあり。またゴーギャンとゴッホのコレクションもあり、頗る見ごたえあり。 それら傑作と並びて、面白い作品もあり。とりわけラトゥールの描きたるボードレール像やら、ヴェルレーヌ、ランボーの肖像は、見飽きぬ眺めなりき。 オルセー美術館は、建物自体にもまた見るべきものあり。もともとは鉄道の駅舎として建てられたる由。そのため南北に長く、装飾には全国の都市の名を嵌め込みてあり。駅舎なれば内部は大部分がらんどうにて、美術館に再利用するには都合よかりしならん。 |
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