小石川植物園(26×36cm ワトソン 2006年2月)

小石川植物園は一般に開放されているとはいえ、大学の研究施設という性格からか、或いは入場料が安くはないせいか、構内はいつも閑散としている。その分、一日をのんびりと過ごすにはもってこいの場だともいえる。

結構広い敷地は北側の高地部分と南側の低地部分とに分かたれ、それぞれに風景を異にしている。北側はところどころ雑木林をまじえた広大な草地であり、南側は池を配した和風の空間である。小石川療養所があったのは北側のようで、療養所が使ったという井戸が今に残されている。

この療養所については、山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」の舞台となっているから、ご存知の方は多いだろう。吉宗の時代、町医者小川笙船が目安箱に投じたという意見に従い幕府が作ったものだ。徳川幕府は300年の治世を通じて、教育や医療などおよそ民生にかかわることがらには無頓着な政権であったが、時代が下り、社会の矛盾が深化するにつれて、綻びをつくろうように、このような施設を設けるに至ったのである。

上は高地部分の北東のはずれにある建物を描いたもの。柴田記念館という。建物の由来は別にして、のどかな園内にあって、なおことさらにのどかさを感じさせるたたずまいに、絵心をそそのかされたのであった。






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