四方山話に興じる男たち
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露西亜四方山紀行その十五:帰国


九月二十日(木)七時に起床、パソコンに向かって航空機のオンライン・チェックインをなさんとするに、システム機能せずとのアナウンス表明され目的を達せず。昨日の日記を整理して後、九時頃運ばれ来れる朝餉を食す。

十時頃ホテルを出で、付近の市場をのぞく。先日この市場にて石子一の鳥打帽を求む。そをかぶりてロシアの街を散策する姿レーニンを忍ばしむ。そを見て余と浦子羨望を覚え、我も又求めんとするなり。しかるに石子の買ひ求めたる露店はあらず、仕儀なく別の露天にて買ひ求めたり。それでもなかなかよろし。

十時半頃ホテルを辞す。フロント嬢をしてタクシーを呼ばしめ、市街を南に走って十一時半ごろプルコヴォ空港に至る。途中市街の様子を見るに、五階建の中層建築物秩序よろしく連なりたり。高層建築物を見る事なし。ロシアの都市の土地利用はおほらかなるが如し。

チェックインをなさんとして行列に並ぶに、日本人の団体を見る。問ひかけるに、二十六人の団体旅行なる由。

構内カフェにて黒ビールを飲みつつカルボナーラ・スパゲッティを喰ふ。ビールを飲みたるは余のみ。他の三子はその元気あらずといふ。

モスクワ行十四時十五分発SU43便に乗る。十四時三十分離陸、十五時四十五分モスクワ、シェメレーチエヴォ空港に着陸す。機内珈琲とサンドイッチを供せらる。

空港にてトランジットと出国の手続きをなす。国内線より国際線への移動はモノレールによれり。出国手続きは至極簡単にすみたり。その後飛行機の出発を待つ間、売店をのぞき歩く。家人のためにチョコレートを求む。熊のミーシャを求めんとせしが、こちらは売られてあらず。市街にても売られをるを見ることなし。すでに忘却されたるやうなり。ロシア人はイベントのキャラクターに冷淡なるが如し。

十九時発成田行きSU270便に乗る。十九時二十分離陸す。やがて夕食を供せらる。余は夕食時に飲まんとて売店にてワインを買ひ求めをりしが、機内持ち込みのアルコールは飲むべからずとのアナウンスあり。さればとて、ワインの機内販売をなしをるやと聞くに、なしをらずといふ。この会社は機内にてアルコールを飲まさずとの方針のやうなり。これロシア人の習性を踏まえたる措置と思し。ロシア人は酔ふと見境なし、飛行機内にて見境なくなるは安全のために脅威なり。されば機内の飲酒を禁止するに若くはなしといふことか。されど、ロシア人の習性を外国人にも適用するはこれ如何。余はやむなく断念せしが、余らの傍らに座れるポーランド人は、人目を盗んでウィスキーを飲みゐたり。

食後すみやかに眠りに入る。目覚めれば朝日を見る。やがて朝食を供せらる。夕食同様味きわめてまずし。喉をとほらず。この食事はオンライン航空券購入手続きの際に特別メニューを選びたるものなれど、かへって普通の食事のほうがましなるが如し。

四時三十分(日本時間午前十時三十分)成田空港に着陸す。入国手続きと税関審査を終へて後解散す。岩子はその脚にて保険会社に向かひ、エルミタージュにて蒙りし損害を申告するつもりなりといふ。



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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016-2018
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