四方山話に興じる男たち
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バラライカの調べを聞く


先日の四方山話の会の席上、石子がバラライカの演奏会を聞きにいかないかと皆を誘ったところ、手を上げたのは小生だけだった。他の連中はロシア音楽にはあまり興味がないらしい。そこで石子と小生の二人で聞きに行った次第だ。日時は昨日(八月二十五日午後二時から)、場所は紀尾井町の紀尾井ホールだ。炎天下を汗をかきながら行き、午後一時半に会場のエントランスで落ち合った。

バラライカというのは、ロシアの伝統楽器で、三角形の胴を持ったウクレレほどの大きさの三弦楽器である。日本の三味線などとは違って、撥のたぐいは用いず、指で直接つま弾く。チターのような音色だ。このバラライカを中心としたオーケストラが日本にも存在して、東京バラライカ・アンサンブルと名乗っている。その定期演奏会を、我々は見に行ったわけだ。

オーケストラは、バラライカのほか、ドムラ、グースリ、フルート、ドラムなどで構成されている。バイオリンやチェロなどの弦楽器、木・金の管楽器は(フルートを除いては)用いず、西洋の伝統的なオーケストラ編成とは大分異なっている。ドムラというのは、バラライカの三角形の胴とは異なり、茹で卵を半切りにしたような形の胴を持ち、同じような音を出す。グースリというのは、ハープの弦を横ならべにして箱の中に収めたような楽器だ。ドラムにはロシア風のアレンジが施されていた。

このオーケストラは、日本人だけで構成されていて、定期的に演奏会を行っているという。そのオーケストラとどんないきさつで石子が出会ったのか聞いてみたところ、昔会社で石子の部下だった女性が、会社をやめたあとこのオーケストラと深いかかわりを持つようになり、石子にも是非聞きに来るように誘いかけて来る。そんなわけで今まで数回演奏会に足を運んだそうだ。今回は四方山話の連中にも参加を呼び掛けたが、残念ながら小生の他に手を挙げるものがいなかったというわけだ。

演奏会は二部に別れ、一部ではオーケストラの演奏、二部ではロシアの人気グループの演奏を中心に楽しませてくれた。この人気グループはモスコフスキー・クヴァルチェートといい、二組の男女で構成されている。二組とも夫婦だと言う。それぞれの夫たちが、バラライカとドムラをひくわけだが、その音色がすさまじい迫力だ。一台でオーケストラ全体に匹敵するような音量である。もっとも石子に言わせれば、バラライカには音の余韻というか、残響が乏しいので、弾手は絶えず弦をかきむしっていなければならないということだ。たしかに見るも忙しそうに弦をつま弾いていた。

そのほかに日本人のソプラノ歌手が出てきて、二曲ばかり歌を歌ってくれたが、しかも二曲目にはロシア風の衣装までつけてサービスしてくれたのであるが、なにせ二曲だけでは歌の良しあしまではわからない。できうればロシア民謡なども交え、もうすこし多めに歌ってほしかった。

演奏会終了後は、暑さのために乾ききった喉をうるおそうと意見が一致し、四谷のしんみち通りにある飲み屋に入った次第だ。そこで我々は文学の効用とか、セックスの快楽について、年甲斐もなく論じ合ったというわけである。



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