四方山話に興じる男たち
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平和と民主主義を語る


ロシア旅行の同人たちと久しぶりに、四谷曙橋の中華料理屋「峨眉山」で会った。前回会ったのは去年の9月のことだから、それから一年以上たっている。コロナ騒ぎで外出できる状況じゃなかったからだ。当然昨年十月に予定していたポルトガル・スペイン旅行も中止を迫られた。その騒ぎが一段落して、例の宣言が解除され、一定の行動の自由が認めらる事態になったことで、世間では一気に人の流れが蜜になった。我々もその蜜に貢献したというわけだ。

まず、近況を報告しあう。とにかくこうして無事な体で再会できたことは喜ばしい。この年になると、生きていることが当たり前ではなくなるので、ましてパンデミックを生き残ったというのは大変なことだ。この調子であと数年は、なんとか生きながらえるのではないか。こう小生が言うと、生きて体が動くうちになんとかポルトガル・スペイン旅行を実現したいね。なにしろ寄る年波には勝てず、一年たつごとに体が衰弱していく。いずれ動けなくなるかもしれん。いまでも神経痛に苦しんでいるところだからね。来年いっぱくらいは、なんとか持ちそうだから、是非その間にポルトガルとスペインに行きたい、と浦子がいう。

その浦子は、宣言解除後方々の友人に声をかけ、十月中に十回ほど飲み会をしたそうだ。一年間我慢していたことの反動だそうだ。他の二人はもっと慎重に行動しているようだ。岩子は、依然小学校の夜警を続けていて、毎晩階段を上り下りして、足腰を鍛えているという。石子は、先日のメールで練馬に住んでいるようなことを書いていたので、吉祥寺から練馬に引っ越したのかい、と聞いたら、いやおれの住んでいるところはもとから練馬で、そこから吉祥寺の駅まで歩いて通っているのさと、という。小生は、吉祥寺と練馬はかなり離れたイメージだったので、ちょっと驚いた次第だ。

ところで、この週末には総選挙があるが、与党は意外と健闘するようじゃないか。自民党は議席を減らすものの、それは前回が大出来だったためで、今回はそこそこの数に落ち着きそうだ。野党の元気がない。とくに立憲は、もしかしたら前回を下回るかもしれない、と言われている。あの党首じゃ野党の顔には不足というわけだろう。自民党への批判は、立憲にはいかず、維新でとまってしまいそうだ。維新が威勢よくなれば、例のファーストとくっついて、第二保守党ができるかもしれないね。そうなったら、日本の政治も多少は面白くなるかもしれない。そんなことを語り合っていたところ。この調子で今の政治が延長されていくと、どうもきな臭いことになってきそうだ。バイデンのアメリカは対中戦争に突き進んでいるし、自民党の右翼分子も戦争好きときている。この調子だと、どうも日本は好戦的な風潮に染まってしまうかもしれない。また、安倍政権以来自民党政治は民主主義をあざ笑うかのような態度をとっている。これもやはり見過ごせない。

そんなことを嘆きあっていると、浦子が平和と民主主義の大切さについて、さまざまな角度から解明してみせた。ところで平和と民主主義といえば、我々が在学中の学生運動も、平和と民主主義を標榜していたね。懐かしい言葉だが、いまこそその言葉が強い光を放っているんじゃないか。いつぞや清子が、学生時代の仲間と、晩年を共通の目標にささげた運動をしたいといっていたが、平和と民主主義ではどうかね。われわれがその中核となって、運動を盛り上げる。それを「平和と民主主義を守るジジババ連合」と名づけたいが、どうかね、そう浦子がいうので、ではそれを略して「平ジ連」と呼ぼうと、小生がフォローした次第だ。

それはともかく、今度の選挙では、野党は統一候補をたてたとはいうものの、全然盛り上がってないね。一緒にやろうという熱気が伝わってこない。おれの所の野党候補は、もと民主党の総理大臣某だが、おれはこいつを政治家として信用していないから、そいつに投票する気にはどうしてもなれない。だから、一人区では白票を投じ、比例区で政党に投票するつもりだ。これはこれで、それなりの意思表示のあり方だと思うから、棄権するよりはましじゃないか。小生はそう断言したところだった。

ところで、その清子を含めて学生時代の仲間とはもう二年以上も集まっていない。どうだねこのさい、皆に呼びかけて、例の四方山話の会を復活させたら。もしかしたら、第六波がやってきて、またぞろ自粛自粛ということにもなりかねないから、なるべく早くしたほうがいいね。

店の中は、われわれのほかに、七・八人の団体と三人の親子連れがいた。まだまだ本格的な回復とはいかないが、少しづつ客が戻ってきているようだ。

例によって、東大門通の方面を歩き、「猫薔薇」というスナックに入った。何度か来た店だ。アルゼンチンのガウチョのような雰囲気を感じさせる老人が切り盛りしていて、この夜も我々に付き合ってくれた。この老人はスペイン文化が好きだそうで、店の飾りつけもスペイン風だというから、店内をよくよく見渡すと、なるほどスペイン風の小物があちこちに飾られていた。この老人は大の長嶋ファンで、今回その長嶋が文化勲章をもらったことを喜んでいた。たしかに長嶋は、日本文化を体現した人間だよ。だから彼ほどその勲章が似合う人間はいない。国民栄誉賞は王の快挙を祝って作られたものだが、文化勲章は長嶋のような人間のために作られたといってよい。そんなふうに老人が長嶋をほめ続けるので、小生はその長嶋に少しはあやかろうと思って、自分の通った中学校と高校は、長嶋が通ったのと同じ学校だったと披露した。すると老人は、自分のことのように喜んでくれたのだった。

前回この店に入ったときは強烈な下痢に見舞われて難儀したものだったが、今宵はその気配はない。そのかわり尿が出ない。小生は最近頻尿に悩んでいて、医者の智慧を拝借しているほどなのだが、この宵は、家を出てから数時間一度も尿意を催さない。どういうわけだろうといぶかりながらも、帰りの電車のなかでの安全をおもんばかって、無理にも出そうと、便所に入ったところ、申し訳程度の量が出てきただけだった。嘆く小生に浦子が慰めの言葉をかける。ションベンガ出すぎるのは、出ないよりはるかにましだよ。しょんべんが出なくなると尿毒症になるからね。そうなったら大変だよ、と。

最後に、四方山話の会の開催日程等を協議して別れた次第。十二月の第一週に、新橋の例の焼き鳥屋で開催しよう。メールで呼びかけて、来れる奴だけ集まればいいじゃないか。


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