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金春流の翁を見る




NHK恒例の新春能楽、今年の出し物は翁。金春流に伝わる古い様式の翁だそうだ。「十二月往来、父尉、延命冠者」という小書きの題名がついている。通常の翁は、前半で翁と千歳が舞いを舞い、後半で三番叟が舞うのだが、この小書きでは、翁は三人出て来る。三人の翁のうち一人が父尉の面をつけ、延命冠者とやりとりをする。また、後半では、三番叟があどとの間でやりとりをし、続いて鈴の段の運びとなる。筋書きが複雑になっているぶん、変化に富んだ演出と言える。

舞台にはすでに全員が上っている。まず三人の翁が直面で静かに舞い、ついで千歳が舞う。翁が三人いること以外には、だいたい通常の翁と同じような謡と舞が披露される。ついで、三人の翁が白式尉の面をかぶり、十二月往来を謡う。十二月往来というのは、月ごとに目出度い文句を謡うものだ。月次謡といってよい。舞は伴わない。十二月往来が終わると、父尉と延命冠者との間でやり取りがある。この二人は父子という設定だ。それが終わると、三人の翁は面をはずして舞台を去ってゆく。この三人の翁のうち、シテは金春安明がつとめた。

後半は三番叟だ。まずもみの段といって、直面で勇壮な舞が披露される。三番叟を演じたのは大藏彌太郎。独特の雰囲気を感じさせる。反閇がうまい。もみの段が終わると鈴の段。これにはあどが出て来て、三番叟との間でかけひきのようなことを行ったあと、三番叟に鈴を渡す。三番叟はその鈴を持って、そろりそろりと舞うのである。鈴の段では、三番叟は黒式尉の面をかぶる。

こんな具合で、通常の翁とはかなり違った雰囲気の翁だった。金春流は大和猿楽四座の一つだが、他の流儀とは異なる独特の翁を伝えてきたということらしい。小生は今回それを始めて見た次第だ。



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