English Poetry and Literature
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エミリー・ディキンソン(Emily Dickinson):詩の翻訳と解説
エミリー・ディキンソン(Emily Dickinson 1830-1856)は、生前はわずか七編の詩を地方紙に発表しただけで、世間的にはまったく知られることが無く終わった。生前制作した詩の数は1700篇に上るが、それらが日の目を見るのは彼女の死後のことである。1890年代に、三冊の詩集が刊行され、一部の評価を得たのであるが、全面的に評価されるのは20世紀に入ってからだった。
エミリー・ディキンソンは、56歳の生涯のほとんどを、自分の生まれた家で過ごし、アメリカ国内を旅行することもなかった。自分を狭い世界に閉じ込めたわけであるが、そうした孤立の影は彼女の詩にも及んでいる。彼女の詩は、彼女だけの内密な世界を、内密なタッチで歌い上げたものが多いのである。
ディキンソンは生涯を独身で通したが、詩の中では官能的な愛をも歌っている。そんなことから、彼女には恋人がいたとか、あるいは同性愛者だったとか、あまり根拠のない説が流布することもあったが、彼女の本当の生活ぶりがどうであったかについては、ほとんどわかっていない。生涯を隠者のようにひっそりとすごしたからだといえよう。
エイミリー・ディキンソンの詩風には、ブレイクの影響やその他の神秘主義的作家の影響をみる向きもあるが、いずれにしてもユニークなものである。愛と死を歌ったものが多い。ここでは、ディキンソンの詩の中から、愛と死を歌ったもの20編あまりを取り上げて、日本語に翻訳のうえ、簡単な解説と批評を加えたい。
一度も成功したことのない人にこそ Success is counted sweetest
手負いの鹿こそ最も高く飛び上がると A Wounded deer leaps highest
醸されてもいない酒を I taste a liquor never brewed
わたしには憎んでる暇はなかったI had no time to hate, because
希望は羽の生えた生き物 Hope is the thing with feathers
恍惚の一瞬には For each ecstatic instant
好きよ、それが何マイルも駆けゆきI like to see it lap the miles
わかってるわ あの人がどこかに I know that he exists
小鳥が道に下りてくると A bird came down the walk
夏 鳥たちに遅れて Farther in summer than the birds
詩人たちが歌う秋のほかに Besides the autumn poets sing
教会で安息日を過ごす人がいるけど Some keep the Sabbath going to church
嵐の夜よ! Wild nights! Wild nights!
宝石を握りしめながら I held a jewel in my fingers
アラバスタ―の部屋でやすらかに Safe in their alabaster chambers
わたしは美のために死んだ I died for beauty, but was scarce
私は苦悩の表情が好きだ I like a look of agony
私が死のために停まることができないので Because I could not stop for Death
コマドリたちがやってきたときに If I should n't be alive
この世で終りにはならない This world is not Conclusion
私は頭の中で葬式を感じた I felt a funeral in my brain
死の床で私は I heard a Fly buzz - when I died
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007-2013
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである