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涼しき装い:竹久夢二の美人画




竹久夢二は、セノオ楽譜や婦人雑誌の表紙絵を手がける一方、商業広告やポスターの分野にも進出した。商業アーティスト竹久夢二の花が開いていったわけだ。当時の夢二は特に若い女性を中心にして人気が高まっていた。商業広告の世界は、日本中に作品を披露するのに決定的な役割を果たした。そうした世界に従事するアーティストは、とかく低く見られがちであったが、夢二は本物のアーティストとしての名声を確立していった。

「美しき装い」と題したこの作品は、広報誌「三越」の口絵として制作したもの。三越の洗練された商品の世界をアピールしたものである。テーブルを囲んで、三人の若い女が思い思いの姿勢で、三越の商品に手を伸ばしている。彼女たちの表情は幸福を絵にしたようだ。その幸福は、三越の商品を通じて得られるのですよ。そうしたメッセージが、この絵には込められている。

なお、この作品は関東大震災からの復興過程にあった東京を背景にしている。震災は、被災者にとっては苛酷な体験だったが、これを契機にして、東京は近代的な都市として発展していく。三越はそうした新しい都市文明を象徴するような存在だった。

(1924年 東京、竹久夢二美術館)




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